ー エピソード8 悪者はどっちだ(後編) ー
城嗣は屋根裏部屋にいた。Black Widowの侵入ルートを考えてみようというわけだ。
そう、自分がもし彼女たちの立場だとしたらどうするかー。
「誰にも見られないようにするには、狭くて暗い場所が好都合だ。そして、入るため
には、近くに木があるとかー」
城嗣は這いつくばった状態でそのままの視線でちょっとしかない窓から外を見た。
「・・やっぱりあった」
その窓の近くには登るのに手頃な木が立っていた。しかし枝は届かず、飛びかかるし
か手はない。普通の人間だったら下へ真っ逆さまだろう。しかし、彼女たちなら可能
だ。
(狙うとしたら、やっぱりここだな)
そしてそこから退散しようと後ずさりをした時、不意に声が聞こえてきた。
「・・・今夜ブツが届く。漁港から人知れず、な」
「いよいよだな」
「ああ、狙い通りだ。今後はでかいぞ」
「早いとこ積み込んでしまわないと、女狐に横取りされたら一巻の終わりだ」
「税関のやつらも腑抜けだし、そこを切り抜ければ万々歳だな」
男たちの会話が遠くなった。きっと行ってしまったのだろう。
城嗣はじっと考えた。
(・・・密輸しようとしてるのか?ブツって何だ?・・・何をしようとしてるんだ、
こいつらは)
金庫の前では健一と城嗣の2人が立っていたが、無言だった。いや、あえてこれから
起きようとしている事をじっくり見てやろうという考えだった。
やれやれ、Black Widowの件で忙しいというのに、別の事件が起きなければいいんだ
が。
屋敷内は相変わらず静かだったが、やがて数人が近づいてきた。大きな木箱を運んで
きたようだ。
すると、前の方にいた男が手を振った。健一たちはそこをどけ、という合図だと悟
り、それぞれ分かれて離れた。
一人が金庫に近づいてダイヤルに手をかけた。が、当然のことながらガードが入った
ので、見ることはできない。
健一はちょっと肩をすくめると、背中を向けたままこう言った。
「その中には何が入っているんだ?」
すると近くにいた男はドスの効いた声で答えた。
「聞かないようが身のためだぜ」
「ふーん」
だが、男の背中越しに見ると、大きな木箱を金庫の奥の方へ入れているのが見えた。
そしてそばには束ねた筒状のものが積み重ねて置いてあるのがわかった。
やがて男たちは扉を閉め、ダイヤルを回すとその場を立ち去った。
2人はしばらく黙っていたが、城嗣は同じものを見たらしく、こういった。
「おい、健。見たか?ありゃあ爆薬だぜ」
「爆薬?」
「ああ、前にもマル暴の奴らが所持していたものと同じやつだ」
「そうか。なるほどな」
健一は顔色変えずに言った。
「読めたぜ。ここを指定したのは、現行を抑えるためだ」
「そういえば、例の女たちが狙っているんだったな。あんな薄汚れた金どうするつも
りだ」
「ところで・・撮ったか?」
城嗣はすっと懐から小さなメモリーカードを見せた。
健一はうなづいた。