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                      ー エピソード7 悪者はどっちだ(前編) ー






               警察署。長ったらしい廊下を健一と城嗣の2人が歩いていた。
               目的の部屋の前まで来ると、健一はドアを叩いた。
               「入れ」
               「失礼します」
               そこは副署長の部屋だった。彼は2人を見るなり、こう切り出した。
               「お前達に警備を頼みたいと思ってな」
               「警備ですか?」
               「ああ、また例の女どもから予告が入って、またやると」
               健一はきりっとした目で副署長を見据えた。
               「それで、どこです?」
               副署長は1枚の紙を彼らが見えるように置いた。
               「ここだ。この屋敷で張って欲しい。ガードの者はいるが、数が多いほどいいとの事
               だ」
               すると副署長は身を乗り出すようにすると、声のトーンを落としてこう言った。
               「ただし、身分は明かすな。まだ話せないが、重要な相手だ。警備会社から来た、と
               でも言っておけ」
               「はい」
               「これがその身分証明書だ。これを提示しろ」
               2人は渡されたそれを見た。『ホントワール警備保障株式会社』とある。ご丁寧に写
              真まで貼ってあった。
               2人は部屋を出たが、城嗣は言った。
               「これって、ほとんど(警察)手帳と写真一緒だぜ。間違えて出したらアウトだな」
               「ああ・・制服は少し加工してあるようだな」
               「重要な相手、か。何だかワクワクするな」
               「ふん」
               健一は同じように笑ったが、すぐに真顔になった。

               2人は普通の乗用車で現地へ向かった。もちろん覆面でダッシュボードにパトランプ
              が隠してある。しかも万が一を考え、検知されないよう遠赤外線で防御されている。
               大きな門構えの豪邸が見えてきた。
               車を停車させると、健一は降りてインターホンを押した。
               『誰だ』
               図太い男の声だ。
               「連絡があったと思いますが、警備の者です」
               『そこにある赤ランプに身分証明書をかざせ』
               健一は振り向いて、城嗣に向かって頷いた。
               彼が降りて近くに来ると、身分証明書を言われた通りにかざした。きっとセキュリ
              ティーチェックをする機械が組み込まれているのだろう。これで屋敷内にある部屋で監
              視するわけだ。
               門が開いた。2人は車に乗り込むと、中へ入った。
               「厳重だな。さすがだぜ」
               「・・ふん、臭いな。すごく楽しみになってきたぜ」
               「ほどほどにしろよ、ジョー」
               「おめえもな」







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