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                    ー エピソード19 ラスト・ケージ(前編) ー





              街の中央にユートランド警察署がそびえ立っていた。
              ここには約5万ほどの職員が勤務していたが、その他毎日何千もの来客がやってくる。
              その中には軽違反を犯して出頭するよう言われた者やご近所トラブルを抱えて相談に来
             る人、はたまた迷子(大人含む)が職員に連れられてやってきたりして、それはまあ賑や
             かだ。

              そんないつものように人々で賑わうロビーに行くかう中を縫うように黒い幅広の女性が
             やってきた。彼女はスタスタと受付までくると、顔を上げてこちらを見て目が合った女性
             に微笑んだ。
              「何かお困りでしょうか」
              「ええ、とっても。実は協力してほしいの」
              「協力・・ですか。・・・はっ、一体何をー」
              受付の女性は目を見張った。誰かが後ろで何かを背中に突きつけたからだ。
              「静かにして」
              黒い帽子の女性もたまたまそばにいた高齢の男性の背中にピストルを突きつけていた。
              「さ、歩くのよ。ただし、声を出さないで」
              そして受付の女性と男性は黙って女たちの言う通りに一緒に歩き出した。
              そして奥まったところにあるエレベータにやってくると女は言った。
              「署長室は何階」
              「・・しょ、署長・・」
              「何階」
              「・・・17階よ」
              「17ね」
              一行は乗り込むと、ドアが閉まった。
              「押して」
              「嘘じゃないでしょうね。騙したらー」
              「・・嘘じゃないわ」
              エレベータは17階に止まった。彼女らはまた静かに降りて受付の女性を先頭にして長
             い廊下を進んだ。
              そして角を曲がり、突き当たりにその部屋があった。
              『署長室』
              女たちは目を見合わせた。
              「なるほど、確かにこんなに奥になるとは、本物だね」
              「さ、入って来客を紹介してちょうだい」
              女性はノックをした。
              『誰かね』
              「受付の木田と申します」
              『どうかしたのかね』
              「お客様がお見えです。ぜひ署長にお会いしたいと」
              『陳情か?・・まあいい、入りたまえ』
              「失礼いたします」
              女性は開いたドアから中へ入った。ドアを開けたのは警備の職員だった。が、その男は
             何かを察知し、黒い帽子の女の腕を掴んだ。
              「何か持ってるな!」
              女はもう片方の腕を出し、彼に何かを投げつけた。すると粉のようなもが飛び散り、男
             はその場に倒れた。
              「・・!お、おい!・・な、何事だ」
              署長の隣にいた副署長が叫んだが、もう一人の女が他にいた護衛の職員を同じように気
             絶させたので息を飲んだ。
              署長は立ち上がった。
              「何者だね、君たちは!」
              「黙れっ、騒ぐとこいつらの命はないよ!」
              女たちは木村と名乗った受付嬢と老人を人質に取っている。それに気づいた2人は青ざ
             めた。
              「・・しょ、署長・・」
              「・・落ち着けっ。・・・・そうか・・こいつらが・・Black Widowか。生き残りがいた
              んだな。・・何が目的だ、あ?もしかして、仲間の解放か?」
              女はふふんと笑った。
              「さすが署長。物分りがいいじゃないか」
              「どうする気だね」
              「とりあえず、どっかへ連絡入れたら?女の生き残りが立て籠もっているってね」
              署長は目で副署長に合図した。副署長は慌てて受話器を取った。
              「・・・あ、私だ。いいか、落ち着いて聞けよ」
              署長はお前が落ち着け、という目で彼を見た。








                            
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