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                      ー エピソード13 黒蜘蛛たちの標的 ー





               薄暗い廊下の奥にその部屋はあった。
               ここでは黒い衣装に身を包んだ女たちが集まり、作戦を練り時にはそれぞれの仕事の
              成果を話し合う場所であった。
               一人の女が戻ってきた。彼女はヘルメットを外すと、ボブスタイルの豊かな髪をかき
              分けると、テーブルの上に大きな袋をポンと置いた。
               すると女たちはそれを開け、手際よく分けた。そしてそれを封筒へ入れた。
               「もっと持ってくる予定だったけど、邪魔されてね」
               「サツだね」
               「ああ、あいつだ」
               女たちは一瞬手を止めた。
               「凄腕スナイパー」
               「浅倉城嗣警部補」
               「あいつは相手の動きを瞬時に判断して先回りしてくる。なかなか手強いよ」
               「悔しいのは・・いい男だということさ」
               「ああ、惜しいな、殺すには」
               リサはハッとした。が、すぐに作業を続けた。
               「あいつをものにしてから殺るか?」
               「そりゃいいね。命がけか、それもいい」
               「やられる前に、やるのさ」
               リサは意を決したように息を飲み、こう言った。
               「その役・・私にやらせて」
               「リサ?」
               「彼を殺る役目、私にさせてちょうだい」
               「いいけど、何か秘策でもあるのかい?」
               リサはこくんとうなづいた。
               「・・あるわ」
               女たちは顔を見合わせた。
               「わかったよ。やるからにはしくじるんじゃないよ。わかってるね」
               「・・・わかった」
               リサは立ち去り、残った女たちはじっと彼女の後ろ姿を見つめた。そしてそのうちの
              一人が目で合図を送ると、一人の女が出て行った。


               健一は、入ってきてそのままコーヒーを飲み干した城嗣を目で追った。
               「うまくいったのか?」
               城嗣は何か考え事をしているようだ。いつもなら成果について感想を言ったり文句を
              言ったりするはずがまるっきり静かだからだ。
               「おい、ジョー」
               「・・えっ?」
               「大丈夫か」
               城嗣はやっと我に返ったようだ。
               「・・ああ・・何でもねえ・・。何だ?」
               健一はやれやれと頭を振った。
               「いいよ、疲れてんだろ。今日は2人だけか。久しぶりだな」
               大槻巡査は研修を一度終え、今日は本部だ。しかしまた交番勤務に戻る。彼の指揮官
              を務める2人に取ってもしばらくの間は肩の荷が降りるというものだ。
               「ああ、なんだか旧友に会ったような変な気分だな」
               「ええ?」
               健一は笑った。
                城嗣は真面目な表情で言った。
               「あいつ、結構鋭いぜ。よく人を観察してる。」
               「ふーん」
               「おめえも気をつけな。最近一緒にいるし」
               「まあ、なんだかわからんが・・お前の言うとおりにするよ」
               2人がそう談笑している時だ。人影が交番近くの茂みに現れた。








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