それはリサだった。
                彼女は身を潜め、じっと中の2人を見つめていたが、やがて箱のようなものを取り
               出し、中の導線を細工しスイッチを入れた。そして停めてあるパトカーの下に入り込
               み、やがて出てきた。
                彼女は腕時計をちらと見ると、その場を立ち去った。
                しばらくしてリサが中の様子を伺う姿があった。彼女は何かを気にしているよう
               だ。そしてこうつぶやいた。
                (・・・今日は行かないのかしら。それとも・・・もう時間が来るわ)
                リサはハッとして逃げるように姿を消した。城嗣が出てきたからだ。この時間にパ
               トロールに出かけるのは日課だ。
                「今日は久しぶりに2人で、か」
                このところ彼は本部付けが多く、健一は大槻巡査と一緒だ。今夜は久しぶりに2人
               でパトロールだ。
                城嗣はキーを懐から取り出し、ドアの鍵穴に刺した。そして開けようとしたが、突
               然強い力で突き飛ばされ、壁に体をぶつけ、その場に倒れた。
                と、その瞬間、パトカーが大爆音とともに爆発を起こし、炎が立ち上った。
                「ジョー!!」
                健が血相を変えて飛び出してきた。そしてフェンスにもたれかかるようにして腰を
               下ろして燃え盛るパトカーを見つめている城嗣のところへ駆け寄った。
                「大丈夫か、怪我はー」
                「あ、ああ・・壁に体を打ったが、なんでもねえ」
                「爆発の衝撃で飛ばされたのか」
                「いや・・・あれは誰かに突き飛ばされた感じだ」
                「なんだって?誰が」
                「・・わからん」
                城嗣は立ち上がり服についた土を払ったが、手を止めた。
                (・・・・ん?この香りは・・・・)
                そして辺りを見渡したがもう既に姿はなかった。残り香か。この香りをつけている
               のは一人しかいない。


                リサは暗いガレージ横で目を閉じ、じっと何も言わずもたれかかっていた。
                彼女の脳裏にはかすかに残る幼い頃の脳裏に浮かぶ光景を浮かべていた。いつも一
               緒に遊んでいた隣の男の子の笑い顔・・。
                (・・だめだわ、やっぱりできない。私には・・・)
                リサは顔を上げ、どこかへと消えた。







                           fiction