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                      ー シーズン2:エピソード9 出向上官 ー






                  町のほぼ中央にそびえ立つ警察署本部に、たくさんの警察官たちが招集され、
                 講堂に綺麗に整列していた。各部署からの集合なので、なんとも壮観な眺めであ
                 る。
                  さて、署長、また各部の所長や部長やらの話も進み、署員らがそろそろ退屈し
                 て来そうな時、副部長がこう言い出した。
                  「さて、諸君に知らせる事がある。ここへ来なさい。」
                  副部長がそういうと、颯爽と1人の女性警官が歩いて来た。一同はだまって彼
                 女を目で追った。後ろの方では数人の職員が小声で話をしていたが、女性はき
                 りっとした表情で彼らの前に立った。
                  「えー、名前は本条 皐(さつき)くん、7区からここの区へ出向になった警
                  部である。」
                  「へえ、警部か・・・女性の警部とは珍しいな」
                  誰かが小声で言ったが、女性はちらとそちらを見た。
                  「今日からしばらくの間こちらの配属になった。まあ、あくまでも諸君の上官
                  であるからしてそのつもりで。・・何かあれば一言。」
                  女性は軽く会釈をした。
                  「本条 皐です。ご紹介のとおり、警部としては女性という事で珍しいとお思
                  いだとは思いますが・・私はあまり気にしていません。ですから、みなさんも
                  どうぞお気になさらぬよう。これからもよろしくお願いいたします。」
                  皐はおじぎをすると、さっさと副部長の後方へ退いた。
                  話は、近辺の事件・事故などの報告、防犯対策などが続き、解散となった。
                  そして集まっていた職員たちはそれぞれの部署へと散り散りになった。
                  「どう思う?」
                  しばらくして健一は言った。
                  「あの本条って人の事か?」
                  「ああ。」
                  「期待している答えなら、こうだ。美人だな、長い髪がツヤツヤして背も高く
                  てー」
                  城嗣はそしてこう続けた。
                  「だが、可愛げに欠けるな。何となく冷たい印象を受ける」
                  「そうだな。俺も感じた。何と言うか・・・機械みたいだ。」
                  「まあ、女という事で馬鹿にされたくない、というのもあるだろうからな。お
                  まけに「警部」だ。やきもきする連中もいるだろうよ」
                  「ま、俺たちには関係ないか。どうせ本部付けだろうし」
                  「ああ、戻ろうぜ」


                  夜の町は眠らない。
                  これから一杯やろうというのかお疲れ気味の勤め人や若者達も笑いながら歩い
                 ている。
                  町中を歩く人々を見ながら、健一はじっと考え込んでいるようだった。
                  このところ例の連中は鳴りを潜めているのか署内も動きがない。
                  しかしきっと今に何かしでかすかもしれない。健一は大きく息を吐いた。
                  そして彼が交番の中へ入ろうとしたとき、1台の車が近づいてくるのを見て立
                 ち止まった。






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