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                      ー シーズン2:エピソード6 再会 ー




                 健一たちのいる交番に少年がやってきた。
                 しかし彼は実に用心深く辺りを見渡し、まるで忍者かスパイのような身のこなし
                でスルリと中へ恙無く入った。
                 「あー、やっと来れた。」
                 「あっ、甚平!」
                 純子は入って来た甚平と呼ばれたその少年を見るなり歩いて来た。
                 「もう、甚平ったら何よ、あの時は”知りませ〜ん”とか言っちゃってさ。私が
                 あなたの事間違うはずないでしょ。」
                 「そんなに怒るなよ、お姉ちゃん。(何やら袋のようなものを出してカウンター
                 の上に置く)ほら、差し入れ持って来たからさ。」
                 「もうっ、こんなので誤摩化して!」
                 健一は笑った。
                 甚平はふと小さな女の子がじっと自分を見上げているのに気づいて、目を見張っ
                た。
                 「あれえ、誰だい、この子・・・迷子?」
                 すると女の子は不安げな顔をして奥へ歩いた。
                 「パパー」
                 「パパ?」
                 「華音、まだ片付けが終わってないぞ。」
                 甚平はふーんという表情で出て来た城嗣に言った。
                 「何だあ、ジョーの兄貴の子供かあ。知らなかったなー、子供がいるなんてさ。
                 いつの間に結婚したの?」
                 「・・いや、結婚はー」
                 「ねえねえ、いつ結婚したの?水臭いなあ、なんで言ってくれないのさ。」
                 甚平は今度は女の子に言った。
                 「君、可愛いね。きっとママは美人なんだね。さすがジョーの兄貴だね。兄貴も
                 見習いなよ。」
                 健一は急に自分に振られたので戸惑ったが、それよりも華音の様子が気になっ
                た。思い詰めた表情になったからだ。
                 「・・・ママ・・・?・・ママ・・・」
                 華音はとうとう泣き出してしまい、甚平は驚いてオロオロし始めた。
                 「・・・えっ・・・ど、どうしたの?」
                 城嗣は華音を抱き上げると優しく髪を梳かして言った。
                 「華音のママはずっと遠くへ行っちゃったんだよな・・」
                 「・・・ジョー・・」
                 城嗣は済まなさそうな顔をしている甚平に黙ってうなずくと、奥へ引っ込んだ。
                 そしてしばらくして一人出て来た城嗣は、事のいきさつを甚平に話した。華音は
                追っていた組員の一人の一人娘で、彼が死に際に彼女を頼むと言って息を引き取っ
                た事、すでに母親は亡くなっていたため、城嗣が養子縁組をして養女として育てる
                事にした事ー。
                 「そうだったのか・・ごめん。」
                 「お前が謝る必要はねえよ。知らなかったんだから。」
                 「だけど、ジョーの兄貴って優しいんだね。見直したよ。」
                 「ふん、うるせえや。」
                 城嗣は鼻で笑って甚平の額をこづいた。
                 「てっ」
                 「ふふふ。」
                 純子と健一も笑った。

                 彼らはひとまず一服したが、健一は甚平を見た。
                 「・・話せないと思うが・・・上手く行ってるのか?」
                 甚平は肩をすくめた。
                 「まあ・・まだ深部は掴めてないけどね。なかなか手強そうだぜ。」
                 「まあ、あまりムチャだけはするなよ。相手が相手だけにな。」
                 「解ってるって、兄貴。」
                 甚平は目の前にペンネのポロネーゼが出て来たので、目を丸くした。
                 そして驚いたように持って来た純子を見上げた。
                 「うわあ、お姉ちゃん、腕上げたね。」
                 すると奥にいた城嗣が言った。
                 「作ったのは俺だ。」
                 「・・ナーンだ。」甚平は純子に言った。「お姉ちゃん、早く自分で作れるよう
                 に努力しなよ。それじゃいつまでたって行けないよ。」
                 「五月蝿いわねっ、余計なお世話よっ」
                 「兄貴、お姉ちゃん、このとおりだから。我慢するんだね。ーああ、そうだ、
                 ジョーの兄貴と結婚すれば?そうすれば兄貴、食べ物に困らないよ。」
                 「・・ご進言どうも。」
                 3人は顔を見合わせてパクパク食べる甚平を見た。




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