城嗣は目を覚ました。
                   天井が見える。自分は壁に寄りかかる感じで床に座っていた。そして後ろ手
                  に縛られているのに気付いて、動かそうとしたが、きつく縛ってあり、手首
                  を微かに動かすくらいしか出来ない。
                   「・・・ここはどこだ。」
                   目の前に鉄格子が見える。牢屋のようだ。
                   「おい。」
                   城嗣は鉄格子の向こう側に立つ男に向かって声を出した。
                   男は振り向いた。
                   「お目覚めかな?」
                   「・・・俺をどうする気だ。なぜこんな事をする。」
                   「大人しくしていれば何もしない。なにしろ、大事な”お坊ちゃん”だから
                   な。」
                   男はじっと城嗣を見てこう言った。
                   「見れば見るほどあの男にそっくりだ。間違いないな。」
                   「・・・あの男とは誰だ。」
                   男は城嗣を黙って見たが、続けた。
                   「知りたいか?お前の父親だ。」
                   「・・・・・。」
                   「かつて、ここの頭だった。」
                   「・・・何っ?」
                   男は城嗣の顔色が変わったのを見てにやりと笑った。
                   「あの男はな、突然反旗を翻し、出て行きやがった。なのであいつの家に放
                   火し、家族もろとも消してしまおうと考えたのだ。全員始末したと思った
                   が・・その時に生き残った子供がいるという話だったがな。」
                   「・・・あの時の炎は俺を確認するためだったんだな。」
                   「そう言う事だ。これでお前があの男の生き残った子だというのがはっきり
                   したという訳だ。」
                   「・・・・・・」
                   城嗣はうつむいた。
                   男は横を見て言った。
                   「おい、お前。ちょっとここへ来い。」
                   「はいはい、何でしょうか。」
                   「こいつを見張ってろ。俺は行かなくてはならん。いいか、変なマネしたり
                   したら、構わないからこれで力一杯叩け。」
                   男は呼び寄せた人物に棒のようなものを渡した。
                   「えー、そんな乱暴な事・・・・。だって、このーあっ!」
                   「・・・えっ?」
                   2人は思わずお互いの顔を見て息を飲んだ。なので男は顔をしかめた。
                   「おい、どうした。」
                   「な、なんでもないよ。」
                   男はふんと踵を返して行ってしまった。
                   しかし城嗣はしっかりその間にも縄をほどき、立ち上がってやってきたその
                  小柄な人物をつかみ、鉄格子越しに引き寄せた。
                   「甚平じゃねえかよ。お前、こんなところで何してんだ。」
                   「いててっ、離してよー、ジョーの兄貴〜」
                   「ジュンが町中で見たっていうのは本当だったんだな。お前・・まさかここ
                   で働いてるって言うんじゃねえだろうな。」
                   「・・まあ・・そんなとこ。」
                   「一体何考えてんだ。こんな輩の配下につくなんてよ。」
                   「これには深〜い事情が・・。」
                   「何が深〜い事情だ。」
                   しかし甚平はいやに自信たっぷりに胸を叩いた。
                   「いいから、オイラに任せてよっ」
                   「ジュンが心配してるぞ。」
                   「・・・お姉ちゃんが?」
                   甚平は先ほどとうって変わって元気のない顔でうつむいた。やはり本当は会
                  いたいのだ。
                   「一回でいいから顔見せろ。安心するからな。」
                   「うん・・分かったよ。」
                   「・・・それより、早くここから出なくちゃなあ・・」
                   「ジョーの兄貴、オイラがこの格子に向かって投げるから撃ってよ。」
                   「それはいい考えだな。」
                   甚平は懐から小さな弾を出し、それを放り投げた。
                   城嗣は後ろへ下がり、何かを取り出しそれに向けて撃った。それは大爆発を
                  起こし、その反動で鉄格子の何本かは折れて下へ落ちた。つまり、衝撃を与え
                  る事で爆発する物で出来ている弾に銃弾を当て、威力を高めたわけである。
                  城嗣はその隙間から抜け出し、甚平と共に走り出した。

                   しばらく行くと、前方で話し声が聞こえた。2人は立ち止まった。
                   「・・大丈夫、逃げられやしませんよ。武器になるものは全部奪っておきま
                   したから。」
                   城嗣は笑った。
                   「そいつはどうかな。」
                   「・・・な、何いっ?」
                   「一つ忘れ物があったぜ。」
                   「こいつ!」
                   その男達は向かって来たが、城嗣はひるまず、何かを出して彼らに投げた。
                   それらは爆発し、その隙に2人は逃げた。


     



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