かなりの距離を走った気がした。
                     そして城嗣と甚平は、海辺に来るとしばらく打ち寄せる波を見つめた。
                     甚平は言った。
                     「兄貴達は内緒にしてね、ジョー。」
                     ジョーはしばらく黙ったが、腕を組んだ。
                     「兄貴って誰の事だ?」
                     甚平はへへんという表情をして石を拾って波に投げた。
                     「・・ありがとう。」
                     「別に。」
                     「それじゃ・・オイラ、そろそろ戻るね。」
                     「あんまり無理すんじゃねえぞ。何かあったら健でも俺でもいいから必
                     ず知らせろ。」
                     「分かってるって。」
                     甚平はそう言うと、持ち前の身の軽さで駆け出し、あっという間に視界
                    から消えた。
                     城嗣はしばらく立っていたが、彼の心は別の事で乱れていた。
                     『お前の父親だ。ここの頭だったー』
                     「・・・父さん・・・・まさか・・・」
                     城嗣はその場に膝をついてそのまま両手をついてうつむいた。
                     自分の父親が自分たちが追っている組織の頭だったとは。
                     脳裏には自分をあやしてくれた優しい彼の笑顔しか浮かばない。


                     彼の頬に涙が伝って砂へ落ちた。







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