ー シーズン2:エピソード4 父の面影 ー
通りはとても静かだった。夜になると人っ子一人通らない。
そんな中、交差点の少し行った通りに面していた交番から人影がさっと飛び出し
た。
中は誰もいない。留守にしていたからだ。
そしてその主たちがパトロールから戻って来た。
パトカーから降りた健一は足を止めた。入り口のガラスが割れている。
「・・・!やられたぞ!」
「・・何っ?」
城嗣も降りて同じようにその光景に目を見張った。
が、そんなとき中から数人の男達が出て来た。まだ中にいたのだ。
彼らは2人の姿を見ると、走り出した。
「待てっ!」
健一たちは駆けて行く男達を追って通りを走った。
やがて通りは町外れの住宅がポツポツと点在する寂しい地区に入った。
男達はそこで右折すると、森の中へ入って行った。
2人は追いかけたが、目の前に広い空間が現れ、男達はそこに建つ古く朽ち果て
た建物に入って行った。
「・・・こんなところに廃屋が・・。」
「ふん、ここに逃げたって無駄だぜ。」
「行くぞ。」
「ああ。」
健一と城嗣は慎重に中へと進んだ。床がギシギシ音を立てる。かなり古そうだ。
が、中程まで進んだ時、2人は異臭を感じ、思わず鼻を押さえた。
「・・ガソリンだ!奴ら、火をつけるつもりだな。」
「・・・。」
「逃げるぞ。」
2人は引き返そうとしたが、突然爆発が起き、火柱が2人の間に走り彼らは二手
に別れる事になってしまった。
彼らの周りには一気に炎が立ち上がった。
「わあっ!」
なので城嗣はそれを見てその場に倒れてしまった。
「・・ジョー!」
健一は何とか炎の合間から城嗣のところへ行こうとするが、炎の勢いは思いの外
強く、彼の行く手を阻んでしまう。
健一は炎の隙間から床にうつぶせに倒れて身動き一つしない城嗣を見た。
「ジョー!」
必死に叫ぶ彼に誰かが襲いかかって来た。
健一はさっと身をかわすと、その男に向かい、格闘し始めた。
「お前達の目的は何だ!言え!」
「それは今に分かる。」
「・・何っ」
「お前も危険人物のようだな。」
健一は取り出した小型の麻酔銃のようなもので男の腹につけた。男は薄ら笑いを
浮かべながらその場に倒れた。
はあと息つく健一の耳に何者かの声が響いた。
『この男は預かるぞ。』
「・・・何っ?」
健一は振り向いた。隙間からは城嗣の姿が見えない。
「待てっ!」
それっきり声がしなくなった。炎の音だけがするだけである。
健一はぼうっと立ち尽くした。あいつらは城嗣を連れ去ったのだ。
きっとこれは仕組まれたに違いない。彼は思った。
でも何故ー。
純子は眉をひそめて、腕組み怖い顔で壁を睨んでいる健一を見つめた。
「・・・じゃあ・・・その男達は、最初からジョーをさらう目的で?」
「ああ。」
健一の見立てはこうだ。
犯人達はわざと2人をおびき出すために交番を荒らし、追いかけて来た彼らを廃
屋へと連れて行き、城嗣の弱点である炎を放ち、隙を見計らって彼をさらっていっ
たのだ。
「問題は何故ジョーの事を知っているのか、という点だ。」
「・・・そうね・・。どうしてるかしら・・・無事だといいけど。」