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                         シーズン2:エピソード2〜侵入〜





                 
                 白鳥純子は、大きな紙袋を抱えてぶつぶつ言っていた。
                 「あー、あんな事言うんじゃなかったわ。”料理は俺が作ってやるかわりに
                 ジュンは買い物だ”だって!ジョーも案外ちゃっかりしてんのね。・・・
                 どっちがちゃっかりしてんだ、って言われそうだけど。あ〜あ、こんな時に
                 いてくれたらなあ。いつも買い物手伝ってくれたしー」
                 純子はあら?という顔で足を止めた。
                 彼女は目の前を駆けていく少年を見て思わず叫んだ。
                 「・・甚平!」
                 しかし彼はそのまま行ってしまい、純子は慌てて駆け出した。
                 「甚平だわ、間違いない。」
                 純子は立ち止まった。見失ったのだ。
                 「・・・相変わらず足が速いわね・・。」



                 交番の中で執務していた純子は、前の方にいた鷲尾健一を見た。
                 「健、私・・甚平に良く似た子を見たわ。」
                 健一は振り向いた。
                 「何?どこでだ。」
                 「ん・・・そこの大通りよ。でも・・何だか周りを気にしてる感じだったわ。」
                 健一は腕を組んで眉をひそめた。
                 「・・あいつ・・・俺たちに内緒で何やってんだ。」
                 「また会えるかもしれないわ。その時は問いつめるつもりよ。」
                 「・・・・・・・。」





                 町外れに聳え立つ建物。
                 その中へ甚平は辺りを伺い、さっと中へ入って行った。
                 「おい。」
                 「は、はい。」
                 「頼んだ物は済んだか。」
                 「ばっちりです。」
                 「そうか、ご苦労。少し休んでいいぞ。」
                 「ありがとうございます。」
                 男が行ってしまうと、甚平はふうと息を吐いて、再び外へ出た。
                 「ああ、肩が張るなあ。」
                 そしていそいそと離れたあと、彼は何食わぬ顔で町中を歩いた。
                 「・・・あっ。」
                 甚平は立ち止まった。そしてそんな彼を見た純子も同じように立ち止まった。
                 「甚平!」
                 彼女は近づいた。
                 「甚平でしょ、やっぱり。どこにいるのよ、何で知らせてくれないの。」
                 「えっ・・いや・・人違いです。僕、急いでるんで、じゃー失礼。」
                 「甚平!」
                 純子は彼が走って行ってしまったのでじっと後ろ姿を見つめるしか出来ずに
                いた。





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