甚平は元の建物に戻って来ると、ドアを締めて寄りかかり、息を整え
                   た。
                    「・・・びっくりしたなあ。まさかあんなところで会うなんて。」
                    そこへ竜が通りかかった。あいかわらずのんびりして少し寝ぼけた顔
                   をしている。
                    「甚平、何してんだ?あんまり遅いと、叱られっぞい。」
                    「・・・竜・・・お姉ちゃんに会ったんだ・・。」
                    「えっ、ジュンにか?」
                    「上手くごまかせたけどね。」
                    「ここでバレたら、オラたちの努力も水の泡だわさ。」
                    「分かってるよ、事が終わるまでお姉ちゃんたちには内緒にしなきゃ。」
                    そこへ奥から声がした。
                    「おーい、そこ。何してる。招集だ。早く来い。」
                    「は、はーい、今行きまーす。」
                    2人は慌てて駆け出した。
                    そしていつもの闇の集会が始まったのである。


                    純子の話した内容に健一と城嗣は何も言わずに考え込んでしまった。
                    やがて健一はこう口を開いた。
                    「・・・あいつが俺たちに黙って何かをしているって事は、恐らく掴ん
                    だものがあるんだろう。」
                    「掴んだものって?」
                    「・・恐らく俺たちが探しているものとか。」
                    「ええ?」
                    「例の組織の事か。」
                    「ああ、多分な。」
                    「なぜそんな危険な事を?何故俺たちに何も言わない?」
                    「それが狙いなのさ。・・・あの人のね。」
                    城嗣と純子は顔を見合わせた。
                    健一はじっと外を見つめた。
                    (・・・ついに動き出したって事だ。)
                    同じ組織はここ警察でも追っている。そして自分たちは彼らとは違う
                   目的で組織を狙っている。
 
                    そう、ようやく彼らの本来の仕事の目的が果たせる時が来たのだ。








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