ー シーズン2:エピソード13 決意 ー
甚平は辺りを用心深く伺いながら、長い廊下を歩いていた。
この郊外に建つ古びた要塞のような建物に侵入してどのくらいの月日が経っただろ
うか。
彼は健一たちに会えた事でここを早く脱出して彼らの元へ戻りたいという思いを強
めていた。おまけに彼はまだ若干11歳の子供だ。普通ならこのような危険もつき
まとう任務に就かせようとしないのだが、甚平は身体能力が並外れていたので任さ
れたのだ。
それに、彼自身もそれが何だか嬉しくてたまらないのだ。恐らく、世の子供、特に
男の子というのはそういうものなのかもしれない。
そんな彼が曲がり角に差し掛かった時だ。奥から凄みのある声が突然聞こえた。
「何っ、失敗しただと?」
「はあ・・あの女が警官を呼んでしまいまして・・・」
「全く運のいい奴です」
どうやら1人の上に立つ人物と2人の子分、ということらしい。
「早く始末しないと、俺達の事がすぐに奴らに伝わってしまうぞ!・・きっと重要
な秘密を握っている筈だ。あいつの親はここの頭だったんだからな。いいか、必ず
息の根を止めろ!」
甚平はゆっくりと後ずさりをした。
(・・・ジョーの兄貴の事だな。こうしちゃいられないや)
彼は足音を立てずに、足早に立ち去った。
健一は、じっと目を閉じて壁に寄りかかっている城嗣を見ると、彼に近づいた。
「大丈夫か?」
「・・・・ああ」
そして彼も同じように隣で寄りかかった。
「しかし、何だってあいつらはお前ばかり執拗に狙うんだろうな・・」
城嗣は目を閉じたまま言った。
「・・秘密を握っている、と思っているんじゃねえかな」
健一は城嗣を見た。
「秘密?」
「俺の親父は・・・」城嗣は目を開けた。が、じっと床を見つめた。「奴らの頭
だったんだ」
「・・・え?」
「だが、逃げたために殺された。お袋も一緒に。・・・本当は俺も殺すつもりだっ
たらしいが、なぜか助かった。火の手が上がって身動きできなかったんだが・・」
健一はじっと彼を見つめた。
「そうか・・・。それでお前が火を怖がる理由が解ったぜ。幼児体験というのは、
大人になってトラウマになって出るって言うからな」
甚平はとある部屋で竜とひっそりと潜んでいた。そして時々情報交換していた。
「というわけでさ、兄貴たちに接触し始めたって事は、こっちにも来るってこと
さ」
「だけんど、ジョーが何かを掴んだっていうんなら、もう解決したも当然って事だ
ろ?それなら長居は無用だわさ」
「うん、でもさ、指示がまだ出てないんだ。しばらく待ってるしかないよ」
「あー、もう帰りたくなったわー」
「もう、竜、辛抱が足りないんだから。じゃあ、連絡してみっか」
甚平は小型の通信機を取り出した。
「もしもし、こちら甚平ー」