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                     ー シーズン2:エピソード11 陰のある女(ひと) ー





                 浅倉城嗣警部補と本条皐(さつき)警部は連れ立って警察署を出た。
                 その途中ですれ違った何人かの警官はちらと彼らを見てそのまま通り過ぎたが、
                中にはこっそり耳打ちしたりしてそれとなく後ろ姿を見ている者もいた。
                 「あれは、最近来た女史じゃないか?」
                 「署一番の荒くれとどうして一緒なんだ?」
                 「でもなかなかどうして、何だかお似合いじゃないか?」
                 「おいおい、あんまり言うと、女達が騒ぐぜ」

                 その女性警官たちはどこから仕入れたのか、早速騒いでいた。
                 何で来たばかりで彼と一緒なのよ、だの私の方が長いのに、と半分ヒスのような
                有様だ。
                 なので普段から城嗣にライバル意識を持っている吉羽は思わずこう言った。
                 「おい、ここは本当に警察署か?高校じゃないんだぞ!ばかばかしい」
                 そして田中刑事を見て睨んだ。
                 「何笑ってんだ」
                 「いや別に・・・」
                 「それより、仕事だ」
                 2人は廊下を曲がって奥へと消えた。


                 城嗣はパトカーに乗り込むと、皐が助手席に落ち着いたのを見て発車させた。
                 「教えてくれないか」
                 「何をです?」
                 「どうして俺と組む事を?」
                 皐はじっと前を見つめていたが、やがて口を開いて静かに言った。
                 「仕事を効率よく進めるには、それに見合った人物と組むのが最良と考えたから
                 です」
                 「・・ふーん」
                 「調書によると、あなたは無鉄砲なところがあり、少々乱暴ではあるが、的確な
                 判断力、行動力、機動力に長けている。そしてー」
                 彼女は城嗣のハンドルを握る手の辺りを見た。
                 「その黄金の右腕。あなたは”署随一の最強スナイパー”と呼ばれている」
                 城嗣は鼻で笑った。
                 「そんな事まで書いてあるのか?その調子なら褒賞懲罰なんでも羅列していそう
                 だな。何しろ俺はけっこう謹慎を食らってるから」
                 「そうですか?」
                 「相手を殴ったり蹴飛ばしたり。入院させた事もあったな。その時は上司と一緒
                 に形式的に家族に謝罪したけどな」
                 皐はふっと笑った。
                 「だけど相手は悪人だぜ。何が悪い」
                 「そうですね、あなたの言いたい事はよくわかります」
                 「・・仕事を効率よく、って言ってたな。俺が今回あんたの相棒に選ばれたのは
                 どういう事だ?俺の射撃が見たいのか?」
                 「それも見られたらぜひ。あなたもここ最近世間を騒がせている組織の事はご存
                 知でしょう?あの連中の隠れ家を見つけられそうなんです」
                 城嗣は彼女を横目で見た。
                 「・・ホントか?」
                 「ええ、それには、あなたが必要なんです」
                 「・・・」
                 一瞬だが、城嗣の脳裏に浮かんだものがあった。
                 『お前の父親はここの頭だったー』
                 まさか、彼女はそれを知って?
                 いや、そんなことはないだろう。そこは履歴にも書いてない筈だ。
                 じゃあなぜ俺が必要なんだ?
                 城嗣はハンドルを切った。








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