女は2階のある突き当たりの部屋に来ると、ドアを開けた。そして中へ入ると
彼に言った。
そこには大きなダブルのベッドがあった。
「さ、いらっしゃい。」
「久しぶりに会ってすぐに誘うのか?はしたないぜ。」
「ふふ、そうかしら?だって・・貴方にまだ逃げられてしまわないようにしな
くちゃ。」
そして女は城嗣の腕を掴むと、いきなりベッドへ突き倒した。
じりじりと獲物を狙う獣ののように見つめる女。
獣ーというと、たいていは大柄だったりガタイのでかい男を指す場合が多いの
だが、この女は、今までそんな男達を手玉に取り、殺して来た。とんでもなく恐
ろしい性格をしている。
城嗣はここに飛び込んで来た事をちょっと後悔した。
もしかしたら明日の朝は太陽を拝む事ができない状態になるかもしれない。
しかし、彼はこの女を早く自分の記憶から消し去らせたいと思っていた。女の
束縛から自由にならなければならない。そのためにはある程度までさせる必要が
あったのだ。
そして多分、数人の同僚達が危ういところで救い出してくれるだろう。
城嗣はベッドの上で後ずさりをし、上に上がって近づいて来る女を恐ろしげに
見上げた。
女はそんな彼を見つめて言った。
「あら・・・私をまだそんな目で見る。・・あの時と同じ。怯えてる。私をま
るで悪魔かなにかを見るみたいに・・。私は別に貴方を取って食おうと思って
いないのに。そう・・・大人しくしてれば、ね!」
女はいきなり隠し持っていた包丁を振りかざし、彼の横に突き刺した。
「・・・・・!」
「横になるのよ、早く!」
「・・・・脅しか。立派な脅迫罪だぜ。」
「ふんっ。」
女は城嗣を思いっきり平手打ちした。そして怯んだ隙に彼を押し倒した。
「相変わらず、私を殴らないのね。・・女を殴るのは性に合わないってあの時
言ってたわね。その優しさが・・・貴方の魅力でもあるけど。」
女は城嗣の頬を撫でると、懐から手錠を取り出し、彼の手をベッドの頭の方へ
上げ、欄干に繋がせた。
「・・・こんなもの、どうやって手に入れた。」
「あら、これってどこでも売っているのよ。ネットとかね。」
「・・・・おめえと会った事が最大の汚点だぜ。」
「何とでもお言い。もう逃げられないわよ。・・・今すぐ貴方とやって、そし
て殺す。」
「・・・てめえっ」
「動かないで!」
女は包丁の刃を彼の首筋に向けてギリギリに差した。
「動くとあの世行きよ。」
「・・・・・。」
「貴方はあの男どもと同じ運命に遭うの・・」
女はベルトに手をかけると手慣れた感じで外し、シャツをめくると中に手を入
れて胸まで滑らせて撫でた。そしてゆっくりとジッパーを下し、ズボンを降ろそ
うと手をかけた。
そして少し降ろしたところで勢い良くドアが開き、ドドっと人が数人流れ込ん
で来た。
「・・あっ」
「女、連続殺人及び強制わいせつの容疑で現行逮捕する!」
女は逃げようとしたが、取り囲まれ押さえられた。
城嗣はふっと息を吐いた。
「・・・・ったく、遅えよ・・。」
「離せっ、ゲスどもっ!」
「はいはい、ゲスで悪うございましたね。」
刑事らが女を連行していく中、健一と純子は城嗣のもとへ向かった。