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                        ーエピソード20 決別(後編)ー



              交番の中では、健一や純子の他に、吉羽、田中の両刑事の姿もあった。
              彼らはじっと机上に向かって黙って見つめるだけで何も言わずにいたが、やが
             て吉羽はこう言った。
              「・・ったく、何で止めてくれなかったんですか。」
              「仕方がなかったんだ。俺が戻って来た時には既に行ってしまったんだ。」
              健一は頭を抱える吉羽を見た。
              「それに、あいつはこうと決めたら絶対に人の話を聞かないところがあるから
              ね。」
              「何か対策でもあるんすかね?」
              「さあな。」健一は拳銃を置いた。「これを置いて行った。あいつがいつも
              持っていたヤツなんだけど・・」
              吉羽はそれを見て苦虫を潰したような顔をした。
              「・・丸腰か。何も護身用のものをも身につけずに行くとは。たいした自信だ
              な。」
              「大丈夫ですかねえ。」
              「・・しかし何だってこんな事を。相手は殺人鬼だぞ。」
              すると健一は静かに言った。
              「・・・例え今は殺人を犯し続ける悪女とは言え、かつては愛した相手だ。傷
              つけたくないんだろう。」
              「・・・・。」
              「ったく、いつもカッコ付けやがって。」
              「カッコいいんだからしょうがないじゃないっすか・・」
              「黙れっ」
              「もう・・。それだから先輩はモテないんですよっ」
              「何をっ」
              「だけど、凄いですね、これ。かっこいいっすね。・・・これ、国産製じゃな
              いな・・。」
              「うん、『ベレッタPX4』。イタリア・ベレッタ社製の銃だ。4種の弾丸を自
              在に操れる代物だ。」
              「・・とにかく、俺たちも現場に急行だ。あいつを失ったらお上が大騒ぎする
              からな。・・俺は別にいてもいなくても同じなんだけど。」
              「先輩ってば心にもない事をーいてててっ」
              吉羽は田中を掴んで引きずるように交番を出て行った。
              「・・俺たちも行こう。」
              「ええ・・。」


              城嗣はある建物の側までくると立ち止まった。そしてドアの前を見て大きく息
             を吐いた。
              女は静かに微笑んだ。
              「やっと会う気になってくれたのね。」
              「・・・・おめえを忘れた事はなかったからな。」
              「まあ、嬉しい・・。私の事をそんなにー」
              「勘違いすんな。決着を付けるためだ。おめえなんかを見ると吐き気がす
              る。」
              女は不気味な笑みを浮かべた。
              「・・さあ、中へ入ってちょうだい。ゆっくりお話しましょ。」
              2人は家に中へ入った。
              そんな彼らのようすを茂みの陰からみている者達がいた。数人の警官だ。そし
             てその背後には数台のパトカーが待機していた。
              しかし城嗣は何も対策をしてないわけではなかった。こっそりとズボンのポ
             ケットに小型の探知機が入っており、そこにはちょっとした音や会話も入って来
             るようになっていた。
              なのでそれを知っていた健一はイヤホンでその中の具合が分かるようにし、周
             りの警官たちに指令が出せるようにしていたのだった。
              それは高感度の探知機で、たとえ女に脱がされたりしても音は拾えるような性
             能になっている。
              「本当に大丈夫なのか?」
              「ったくあいつはどこまでいちいちキザなヤローなんだ。」
              「・・先輩、もしどうかなっちゃったらどうすんすか?」
              「どうなっちゃったらって、何なんだよっ。」
              「言えませんよ、そんな事ー」
              「だったら、言うなっ!」
              吉羽たちの近くで潜んでいた健一と純子はじっとしていた。が、純子は少し不
             安げだ。
              「ジョー、大丈夫かしら・・。きっと心の中は穏やかでないハズよ。」
              「・・・あいつなら、きっと上手く切り抜けるさ。大丈夫。」




          
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