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                          〜エピソード17 代役〜



 
               パトロールから戻った健一と城嗣はパトカーから降りた。
               一足先に交番に入った健一は、ふっと息を吐いて奥へと進んだ。そしてテー
              ブルに伏して寝ている純子を見下ろした。
               「・・ジュン。ずっと俺たちの戻るのを待っていたのか?」
               そして近くにあった毛布を持って来て彼女の肩に掛けた。
               「風邪を引いても知らんぞ。」
               健一はそのままどこかへ引っ込んでしまったが、それを見ていた城嗣は腕組
              みをしてため息をついた。
               翌日になった。そして何事もなかったかのように彼らは軽い食事をして、純
              子はいつものように白バイにまたがって行ってしまった。
 
               その後、城嗣は警察署で純子を見かけると近づいた。
               「あんなところで寝てたら不用心じゃねえのか?」
               「あら、私は平気よ。」彼女は書類から目を離さずに答えた。「不用心なの
               は、交番の方じゃなくて?(ちらと彼を見る)いつも留守なんだから。」
               「しょうがねえじゃねえか。」
               「気にしてくれてるのなら、ホントに大丈夫よ。貴方は優しいのね。」
               「・・健のやつ、少しはジュンを労る気持ちがあればいいんだがな。」
               「いつもの事よ。慣れてるわ。」
               そう言う純子は少し寂しそうな表情をした。それは一瞬だったが、城嗣は見
              逃さなかった。
               「早く戻らないと、健がうるさいんじゃない?」
               「分かったよ・・」
               純子は城嗣の後ろ姿を見つめた。

               それから数日が経った。
               通りから奥まったビル内で立てこもり事件が起きた。近くをパトロールして
              いた健一と城嗣は現場に向かった。
               「ジョー、応援を要請してくれ。」
               「健は?」
               「様子を見て来る。」
               「無茶すんなよ。」
               「ああ。大丈夫だ。」
               城嗣がパトカーへ戻って行くと、健一はビルを見上げ、中へ入った。
               そして用心しつつ数人の警官の間をくぐって進んだ。
               「あ、鷲尾さん。」
               「犯人の様子はどうだ?」
               「人質を取っているようです。ここの従業員のようです。」
               「そうか。最上階だったな。」
               「あ、どちらへ?」
               「犯人のところだ。」
               そう言うと健一は軽い身のこなしで駆け出した。
               「あっ、鷲尾さん!」
               警官は慌てて叫んだが、もう彼の姿はなかった。
 
               健一はエレベータから降りると音も立てずに廊下を歩いた。この先の部屋だ
              な。
               彼はドアに近づくとドアノブに手を掛けた。が、それは簡単にカチッと音を
              立てて開き、健一は意表をついたが、そのまま中へ入った。
               そして中程まで進んだが、カチッと言う音が聞こえて何かが頭に突きつけら
              れた。
               「・・・手を挙げろ。声出すなよ。」
               「・・・・お前が立てこもっている男か。」
               「一人で来るとはいい度胸だなあ、お巡りさん?」
               「・・・人質はどうした?無事なのか?」
               「元気だよ。お前も人質としていてもらうか。」
               「人質は解放しろ。俺が代わりになる。」
               健一は相手が黙っているのに構わず続けた。
               「俺が囮になれば・・警察が慌てるのが見られて面白くなるぞ。」
               「ふん、大した事言うじゃないか。警察の人間だろ?」
               「俺だってあいつらの慌てる姿は見たいからな。」
               男は笑って、座らせていた一人の若い男性社員を縛っていた縄を解いて、外
              へ出るよう顎を動かした。
               社員は慌てて逃げだした。
               「よし、ここに座れ。」
               男は健一の両腕を椅子の背もたれに回し、縄で縛り付けた。
               彼は男が外を伺っている隙に、腕時計のスイッチを押し始めた。





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