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                       〜エピソード13 昔の女〜


              警察著に1通の手紙が届いた。それはある女からであった。
              城嗣がかつて交際しそして彼を追いつめた女だ。内容は彼への異常なほどの想
             い、そしてまるで挑発するように、私を捕まえられるなら捕まえてご覧、そうし
             ないと、彼がどうなっても知らないわよ、と付け加えてあった。

              それを知った城嗣はすぐさま署へ向かった。そして彼を見た刑事はため息をつ
             いた。何で来たんだよ、お前、狙われてんだぞ、という顔だった。
              が、彼はつとめて涼しい顔をして出迎えた。
              「おや、警部補殿。ご機嫌麗しく。」
              「おいっ、あの女から手紙がここに来たって本当か?」
              「そうですよ、しかも我々捜査一課にね。」
              「読んだのか?」
              「もちろんですよ、仕事ですから。」
              「俺に見せろ。」
              「ダメです!捜査の手がかりですから。それに・・かなり卑猥ですよ。」
              「貴様!それをどうするつもりだ。署にバラまくのか?」
              「そんな事しませんよ。知ってるのは捜一でもごく一部の人間ですから。」
              刑事はふんと鼻で笑った。
              「でも、大人しくしないと、本当にバラしますよ。」
              「・・・この野郎っ」
              「ごめん!」
              刑事は城嗣の溝撃ちに拳を入れた。
              「ううっ。」
              側にいた田中巡査は慌てて倒れ込んだ彼を抱えた。が、重みで自分もしゃがん
             でしまった。
              「・・ったく、やっと静かになった。ただでさえホールに声が通るんだか
              らー」
              「キャーっ!!」
              刑事はうっとうなった。そしてしまった、という顔をした。
              「ちょっと!何すんのよ!」
              「浅倉くんをよくも殴ったわね!」
              刑事はやってきた佳美たちを見た。
              「殴ってない!眠らせただけだ!」
              「眠らせたって、どういうつもりよ。部長に言いつけるわよ!」
              「あの手紙を彼に見せたいんですか?え?不快な事だらけだ。」
              「・・また来たのね。」
              すると、ずっと城嗣を抱えていた田中が悲鳴を上げた。
              「せ、先輩〜、どうしたらいいんですか〜」
              刑事はふうと息を吐いた。
              「・・医務室へ運ぼう。」
              2人は彼を抱えた。
              「ちょっと、もっと優しく扱ってよ。彼はデリケートなんだから。」
              「どこがっ」
              「・・あ〜あ、俺も優しくしてほしいなあ。」
              「田中っ!ちゃんと持て!」
              「持ってますよー」
              「もう・・」美香巡査長は隣でぼうっとしている佳美巡査長を見た。「ちょっ
              と、佳美。何ぼんやりしてんのよっ。」
              「・・はっ。あー、神様、ごめんなさい!」
              「・・・・・。」
              「私は、彼の寝顔に見とれてました、まつげが長くて色気を感じてしまいまし
              た、ごめんなさい!」
              刑事はぶつぶつ言った。
              「・・・たっく、うるせえな。・・・何でこいつだけ。」


              健一は署に来ると、医務室に入った。そして、ベッドの上に寝かされている城
             嗣のところに来ると、彼の上半身を起こし、背中に回って膝を思い切り打ち込ん
             だ。
              「うっ。・・ゴホゴホッ。」
              「大丈夫か?」
              「・・・健?・・・・くそっ、あの野郎っ」
              健一は降りようとした城嗣の肩を押さえた。
              「待て。あいつは、本当に手紙をお前に見せたくなかったんだよ。」
              「・・・。」
              城嗣はうつむいて目を閉じた。
              「ここに来たから、多分解決は早いさ。きっと彼らがやってくれる。それより
              無理するな。まだ安静にしてなきゃダメなんだろ。」
              「もう平気だ。あまり構うな。」
              健一は頭を振った。
              「しょうがないな。相変わらず頑固だ、お前は。」
              「ふん。」
              城嗣は立ち上がった。なのでしかたなく健一も立ち上がり、彼に付いて行っ
             た。

              城嗣は実は女の影に怯える事が多くなり、体調を崩して最近まで寝ていた。
              今頃になって女が彼にまた近づいて来たのだ。
              女は彼のいるところにどこかに隠れ、じっと彼を見張るようにしてつきまとっ
             ていた。
              そしてそれはエスカレートしてつい前日もロッカーが荒らされ、彼の身につけ
             ていたものが2、3盗まれていたのだ。仕事中にも関わらず電話をしてきて卑猥
             な事をつぶやくのも毎日のように続いた。

              交番の中からじっと外を見つめている城嗣は思い詰めた表情をしていた。
              例の女の事を思い出していたのだ。
              思えば、あの出会いが悪夢の始まりだったと彼は思った。




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