『 願い 』




                      地球というのはあんなに青かったんだな。
                      俺があの時投げた羽根手裏剣が分子爆弾の起爆装置を止めた、と聞いた
                      時はまさかと思ったが、これで奴らも滅びたってわけだ。
                      俺も役目を果たせて安心だぜ。

                      これで思い残す事はない。もうすぐ俺の記憶は消えてしまうだろう。
                      だからその前にお前らに言っておくよ。
                      あの時も言ったが、はっきり言って辛くてあまり言う事が出来なかった
                      からな。


                      博士、今まで俺を育ててくださり、ありがとうございました。
                      本当は感謝しているのに、何故だか言えなかった。
                      そして最後の最後まで我が侭を言って申し訳ありませんでした。
                      俺はもしかしたら、博士に甘えたかったのかもしれません。

                      健、おめえには最後まで心配かけて済まなかったな。
                      おめえに相談できたら、とっくにしてたと思うが、何故だか出来なかった。
                      忍者隊の任を解かれるのが怖かったという事もあるが、おめえに余計な
                      心配を掛けたくなかった、というのが本音かな。おめえとは長い付き合い
                      だからな。日本に来て最初に会い、心を開いたのもおめえだけだ。
                      今までありがとうな。

                      ジュン、あの時も言ったが、健を離すんじゃねえぞ。あいつはまだお前の
                      気持ちに気付いてねえようだが、そのうちきっと振り向くだろうよ。
                        お前のような綺麗な子に好かれているって言うのに、しょうがないヤツだ
                        ぜ。
                      お前は強かったけど、優しくてまた機転が良く利いていた。助けてもらっ
                      た事もあった。頼もしい仲間だったぜ。
                      幸せにな、ジュン。

                      甚平、いつだったか、お前、自分の事弟だと思ってくれてもいい、って
                      言ってたよな。凄く嬉しかった。
                      お前のような子供が戦いに身を投じる事は間違っていたな。だが、俺たち
                      が考えつかないような発想で何度もピンチを切り抜けつ事が出来た。
                      お前はたいしたヤツだよ。
                      これからは友達もたくさん作って、思いっきり遊べよ。
                      そして今までと同様、ジュンを助けてやるんだぞ。

                      竜、ゴッドフェニックスの操縦、ご苦労だったな。
                      俺は実際に操縦してみて、おめえの凄さが分かったよ。ギャラクターの
                      攻撃をかわし、空中はもちろん海中でも自在だった。感服するぜ。
                      おめえには”冷たい”だの”冷酷だ”だの言われたが、戦いにおいては、時に
                      は情を捨てる事も必要だ。
                      おめえには家族がいる。ちょっとした気の弛みで死んで欲しくなったから
                      だ。嫌われ者になったって構わねえのさ、大事な仲間のためならな。
                      でもおめえのその優しい気持ちは痛いほど分かってたぜ。
                      それと竜。おめえ、やっぱり少し痩せたほうがいいな。
                      おめえを支えたときははっきり言って辛かったんだぜ。かと言って振り落
                      とすわけにもいかねえし。第一、病気になっちまうぞ。
                      いいか、絶対ダイエットしろよ。


                      そろそろ行かなくちゃな。
                      あの小屋に入ったら多分、俺は記憶をなくすだろう。
                      最後におめえらに頼みたい事がある。
                      今見えている地球は碧々していて綺麗な色をしている。
                      どうかこのまま地球を綺麗なまま残すために守って欲しい。
                      俺はやる事はやったから、後はおめえたちの番だ。
                      頼んだぜ。

                      じゃあな。
                      今後会う事が出来たら、またみんなで楽しくやろうぜ。

                            

                      元気でな。




                                     fiction