『 薔薇
』
「ジョー、何故あの薔薇が爆弾だと分かった?」
「・・えっ・・なあに、勘ってヤツですよ。」
南部博士に聞かれた時、俺はとっさにそう答えたが、勘なんかじゃない。
あれは薔薇の形をした爆弾だ。
俺はこの目でハッキリ見た。あの時、一人の女がそれを手にしていた事
をー。
俺は親父とお袋から離れて一人で遊んでいた。
何をしていたのか覚えていないが、波の音がひっきりなしにしていた事は
覚えている。
そして突然銃声が辺りに響き渡った。
俺は驚き、気がついていたら走っていて、親父とお袋がいるところへ行った。
だが、2人はもう動くことはなかった。
俺は、彼らは殺されたのだと子供ながらに直感した。
振り返ると、一人の仮面の女が立っていた。
俺はとっさに親父の手から拳銃を取り、女に向けて歩いた。
そして女は手にしていた薔薇を俺の手前に投げた。
それは爆発した。
でも俺はそれ以降は覚えていない。記憶がそこで途切れたのだ。
俺がギャラクターを憎む事はあいつらは分かっている。
だが、本当の悔しさというものは分かっていないんだ。
それまで優しく包んでくれた親父とお袋が、一瞬のうちに冷たくなって
しまった。もう二度と笑って声を掛けてくれたり、抱きしめてくれる事
はもうなくなった。
誰にも分からない、この言いようのない苦しみ、そして悲しみが。
頼れるのは自分だけ。己の本能の赴くままに生きるだけだ。
俺は必ずギャラクターを倒す。そしてそれが遂げられた時、俺は晴れて
親父たちに会う事が出来るだろう。
その日は近いうちに必ず来る。必ず。
だから待っててくれよ、俺のこの手であいつらを葬り去ってやるからな。