『 ギャラクターの刺客(後 編) 』




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                ジョーは目を覚ました。
                そして起き上がろうとしたが、額 にライフルの先が当たったので顔をゆっくり
                上げた。
                「・・・・お前は!」
                彼を見下ろしているのは近づいて 来たあの男だった。
                男はニヤッと笑った。ジョーは睨 んだ。
                「何をする気だ。」
                「お前さんを連れ出すよう指令を 受けたんだよ。そしてそれが今達成しつつある。
                科学忍者隊G2号、又の名を”コ ンドルのジョー”」
                今度はジョーが薄ら笑いを浮かべ た。
                「ふーん、なるほどギャラクター か。俺の素性も筒抜けだったな。忘れてたぜ。
                ・・・で?俺を連れて行って何す る気だ?殺すのか?他に目的でもあるのか?」
                「さあて、どうするかな。」
                男はライフルを放り投げると隣に 座り込んだ。
                「お前さん、浅倉というやつの息 子なんだってな。」
                「親父か?ふん、相当名が通って んだな、知らなかったよ。」
                「知らなかったって?・・まあそ うだろうな、子はあまり事情を知らされないまま
                気がついたら同じギャラクターに いるって寸法さ。組織の事は内緒だからな。」
                「お前もしょせんはギャラクター の子ってわけか。」
                「その浅倉はうちの親父と一緒 だったらしい。でも彼は優秀だったので上から目を
                かけられて最高幹部に仕立て上げ られたって話だ。・・でも突然姿をくらました。」
                「・・・・・。」
                「次に入って来たのは、彼の訃報 だった。みな驚いていたよ、てっきりカッツェら
                に忠誠を誓っていたと思ってたか ら。でも実際は違った。上に上がって倒す機会を
                狙ってたんだ。でも当然無理な話 だ。逆に追いつめられて家族を守るために逃亡
                する羽目になったのさ。」
                ジョーは目を閉じた。だから俺は カッツェに目を付けられ、こうして追いつめられ
                るんだな。
                 ”親の罪は子の罪ー”
                彼はぐっと唇を噛み締めた。
                そんなジョーを見ていた男はす くっと立ち上がり、見下ろした。
                「俺たちは同じ境遇から抜けられ ない同士だな。・・なあ、どうだい?また一緒に
                走らないか?今度は邪魔のない正 々堂々の勝負だ。」
                ジョーも立ち上がり、スーツに付 いた土ぼこりを払って彼を見据えた。
                「そうだな。まだ決着がついてな いからな。」
                2人は暗闇の中を進んだ。


                会場は誰もおらず静かだった。
                あのごとごたで観客もスタッフも 引き上げてしまったのだ。
                しかし2人はまだ整備仕立てのマ シンで競争することにした。コーナーもみな独り
                占めだ。
                ヘルメットを装着してコクピット に身を沈めた。エンジンを吹かす間、彼らはお互
                いガラス越しに相手を確認する と、2本指を額に当て、互いの健闘を送った。
                そして2台はスタートした。マシ ンの爆音が当りに響き、彼らは誰もいないサーキッ
                トを思うままに駆け抜けた。

                そんな時だ。
                上空からヘリがやってきて、突然 彼らに向かって乱射し始めた。
                「・・・ギャラクターか。・・・ まさかあいつ・・」
                ジョーは男が一緒にと誘うふりし てギャラクターに襲わせたに違いないと思った。
                やはりギャラクターは信用しては いけない・・。
                ジョーは絶望し怒りそうになった が、男がマシンをとめ、窓を開けてヘリの男を
                めがけてライフルを向けたのを見 てブレーキを掛けた。
                撃って来た隊員は悲鳴を上げて下 へ落ち、ヘリはその場を離れたが、中の操縦して
                いた隊員が顔を出した。
                「貴様!裏切るのか!」
                「俺は・・俺は二度とこんな事は ゴメンだ!」
                「・・こいつ!」
                隊員はライフルを向けた。
                「ううっ!」
                銃声がして男は腕を押さえた。
                「やめろ!」
                ジョーは羽根手裏剣を手にし、ヘ リの男に投げた。
                「うわああっ」
                隊員は気を失い、そのままヘリも バランスを崩して場外へ落ち、大破した。
                ジョーはマシンの横で腕を抑えう ずくまる男に駆け寄った。
                「大丈夫か?」
                「・・・・・ああ。ジョー、会え て嬉しかったぜ。・・・ありがとう、大丈夫だ。」
                男はふっと笑った。
                「・・・・でも、裏切り者は自分 で始末をつかないとな。」
                「・・・・・。」
                「さようなら。早くここから立ち 去ってくれ。出来るだけ遠くへ・・・。決して
                振り向くな。」
                「・・・ああ・・・俺も楽しかっ たぜ。」
                「元気でな。」
                ジョーはぐっと拳を握り、背中を 向けた。そして走り出した。
                やがて背後で爆発音がした。突風 とともに機械か何かの破片が飛んで彼の足下に
                落ちた。
                「・・・・・。」
                ジョーはうつむき、目を閉じた。 そして微かに笑った。
                「・・・ふっ・・俺の目の前で爆 死したのはこれで・・2人目だな。」
                彼は耐久ラリーレースを共にした ルシィを思い出していた。
                彼女もまた、ギャラクターに使わ れ、そして裏切ったために自ら命を絶った。
                あの男は、それこそ自分をギャラ クターの基地へ連れて行く役目を負っていたが、
                同じ血筋を引いているということ で心が揺らいだのだろう。


                数日後、仕切り直しのレースが行 われた。
                大方の予想通り、ジョーは優勝 し、クルーらと共にシャンパンシャワーをした。
                やがて彼はその歓喜の輪から一人 離れ、1本のシャンパンボトルを手にすると、
                あの男が爆死した場所へ向かっ た。そして振り、栓を明けてそこへ掛けた。
                「・・・今度は、人間となって 戻ってこいよ。また会おうぜ。・・・・ちぇっ、
                名前を聞いておくんだった な・・。」
                ジョーは目を閉じ、そしてその場 を立ち去った。

                そして会場は熱気を包んだまま、 夜を迎えた。



                              ー  完 ー






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