『 相棒エピソード0 <5>科学忍者隊・G2号、誕生! 』




               partner_5


            

              南部はじっとスクリーンを眺めた。そして眉間に皺を寄せ、険しい表情で言った。
              「どのくらいの被害になった。」
              「は、かなりの規模だと思われます。我々が開発しようと手掛けた場所がことごとくや
              られています!」
              「博士、このままでは計画がー」
              「・・わかった」
              南部は踵を返し、ドアへと向かった。
              「博士、どちらへ?」
              南部はしかし何も答えず、部屋を出て行ってしまった。
              残された技術者たちは再び情報収集に追われた。

              レースの様子を見ていたジョーは遠くで煙が上がっているのを見つけたが、
              目の前を駆け抜ける仲間たちに視線を移した。
              相変わらず紛争があちらこちらで起きている。彼はそんな風に捉えていた。
              いつかはこんなのんびりした暮らしも脅かされる時が来るのかもしれない。
              でも今はとりあえず楽しむことを考えることだ。
              何者かによって幼い頃の夢を壊されたくない。

              寄宿舎の部屋に戻ったジョーは机上に置かれた手紙らしきものに目を留めた。
              「・・誰だ?」
              俺に手紙なんて珍しいな。
              一体誰だと思ったが、封筒の裏に書かれた名前を見て納得した。
              南部孝三郎ーああ、あの人か。今頃なんだろう。
              ジョーはすっかり母国語以外のこの地の言葉に精通していた。
              なので難なく読めていたが、その内容に顔を顰めた。
              が、しばらく考えて彼は養父の元で暮らすと告げ、荷物をまとめて寄宿舎を出た。


              集合場所はISO(国際科学技術庁)のとある部屋だった。
              ジョーは女性やまだ幼い子供がいるのに内心驚いた。そして恰幅のいい少年、そしても
             う一人ー

              「お前も?」
              「ああ、まさかまた一緒になるとはな」
              健は笑った。
              南部は集めた5人の少年少女らにこう言った。
              「知っての通り、とてつもなく大きな闇の組織が世界中を恐怖に陥れている。
              君たちはこれから一つの部隊となって、彼らと戦う平和の使者となってほしい。
              世界の人々は君たちの活躍を待ち望んでいる。是非とも力となってくれ」
              まだ年端も行かない彼らである。巨大な敵を倒していくのは心もとない気もするが、
              5人はその才能や技術を買われたのだ。

              「君たちの手足となってくれる相棒と引き合わせよう」

              5人はそれぞれ自分の分身となるメカの待つ部屋へと案内された。

              ジョーは中へ入るとそこにひっそりと置かれた1台の車に目を奪われた。
              「・・・すげえ、スポーツカーじゃないか。それも2000クラスだ。」
              ジョーはそっとボディに触れてみた。
              車体は無機質な材質で作られているはずなのになぜだか温かみを感じた。

              ああ、そうだ。
              ジョーは左腕のブレスレットを見つめた。
              南部はこれを常につけていること、そして絶対に無くしたりしてはいけないと説明して
             いた。
              そして、合言葉によって変身することー。

              「変身って何が?ロボットにでもなるのか?」
              ジョーはそんなことを言いながら、教えてもらった言葉を口にした。

              「バード・ゴー!」

              すると彼自身が眩い閃光に包まれ、そして次の瞬間にはヘルメットとマント姿になって
             いた。
              その様子はまるでー
              「鳥だな」
              そういえば、俺は”コンドルのジョー”というコードネームだったっけ


              ジョーはふと車に目を向けた。そして思わずこう言った。
              「お前も変身するのか」
              彼の目の前にいたのは、先ほどのスポーツカーではなく、F1型レーシングカーだった。

              ジョーはそんな車を見ているうちに一気に子供時代の思い出が鮮明に脳裏に浮かんでき
              た。
              レーサーになる夢を父にしていた頃。レース場まで彼を連れて行って一緒にレースを楽
             しんでいた父。
              あの爆音と共に楽しかった出来事がジョーの記憶に蘇ってきた。
              ジョーはぎゅっと拳を握りしめた。

              そうだ、俺は親父そしてお袋の仇を取る。
              このメカと共に暴れてやる。
              あいつらを根こそぎ葬ってやるんだ。

              頼むぜ、相棒。よろしくな。

              ジョーはそうG2号機に語りかけた。
              よろしく、そう相手も応えた気がした。


              科学忍者隊、そしてG2号・コンドルのジョー誕生である。




                           ー 終わり ー






                            fiction