『 相棒エピソード0 <2>出会い 』
2つの乾いた銃声が浜辺に響き渡った。
男女の叫び声。
ジョージは作りかけの砂の山を放って駆け出した。
何か起こったんだ。
パパとママに何かがー。
ジョージは足を止めた。
ビーチパラソルの下でテーブルに伏せる2人。
彼は驚きと同時に何かを察知して視線を動かした。
あの人は誰だ。
こちらをみている。
もしかしたらあいつがパパとママをー。
そう思うが早いか、ジョージはその瞬間にはジュゼッペの手にしていた拳銃を手にし
て遥か遠くにいる女に向けた。
弾の位置は把握している。
ジュゼッペの仕込みが身に付いているため、すぐに構えて女に近づいた。
が、そこから彼は記憶がない。
女の投げた爆弾によって吹き飛ばされたのだ。
島に学会で訪れていた優秀な科学者でもある南部博士は銃声と人々の動きに何かを感
じ、海辺へやってきた。
波静かな場所だった。
彼はゆっくりと歩いた。
テーブルに伏する男女をチラと横目で見ると、人だかりを掻き分けた。
「失礼」
博士は目を見張った。
「・・子供?」
彼はまだ息があった。微かではあったが。
そこで博士は彼を抱きかかえた。
「あの、もし、その子をどうするつもりで?」
一人の男性が訪ねた。
「私の病院へ運びます。私は医師です」
「ああ・・そうでしたか・・」
博士は男性に一礼してゆっくり立ち去った。
男性はじっと博士の後ろ姿を見つめた。
ジョージは博士らの看病の甲斐があり、良くなっていった。
そう、体は。
ジョージは博士の一存で、ジョーと呼ばれることになった。
両親を殺した連中に狙われる危険性が高いからだ。
ジョーはいつも一人だった。
博士は大抵研究所へ行っているし、家政婦も忙しそうだ。
パパとママに会いたい。
どうやったら会えるかな。
優しかった両親の顔がいつも脳裏から離れない。
留守にすることが多かったけど、クリスマスや感謝祭にはいつもいてくれた。
ジョーは唯一入室が許されている博士の書斎へ向かった。
ここの国の言葉は難しくてよくわからないけど、何か面白そうな本があるかもしれな
い。
でもさすがというか、研究や何やら難しそうな科学の分厚い本がほとんどだ。
ジョーはガッカリしてふとある本の背に書いてある文字を見つめた。
『世界の車』
彼はそれを手にして目を見張った。
表紙にはテレビやレース場でみた、F1レーシングカーがでっかくプリントされてい
る。
ジョーの心に憧れていたレーサーの姿が鮮やかに蘇った。
ー 続く ー