『母への想い』
ジョーはカーネーションを見つめた。
それはよく会う近所の子供が教会からもらったと持って来たものだった。
燃えるような赤いその花は、また優しげでもあった。
それはまるで、遠い記憶に微かに残る母の面影を思い起こさせるかのようであった。
ジョーは子供の頃よくしてたようにベッドの上に立て膝をして窓に向かってお祈りをする
ような格好で目を閉じた。
母さん。
こうして母さんに向かった祈り始めてもう10年になる。
俺にはあまり思い出はないけど、微かに母さんの笑顔が残っている
気がする。
そちらは楽しいのかな。きっと地球より平和だろうね。
母さん。俺はもしかしたら、もうすぐそちらへ行くかもしれない。
だけどあの時よりだいぶ大きくなったからびっくりするかもな。
でも一度たりとも母さんの事、忘れた事はない。いつでも笑って
優しく暖かだった。
そこへ行って会えたのなら、また母さんの手料理が食べたいな。
これだけは絶対に忘れてはいない。
でもまだ行く訳にはいかないんだ。母さん達を殺した連中を倒して
それから行くよ。
それまで元気で待っててくれ。
父さんにもよろしくな。
愛してるよ。
ジョーは目を開けた。
そして立ち上がって少し窓を開けた。花瓶に差した一輪のカーネーションが優しく揺れ
た。
入って来る風を受けたのだが、それはまるで、天にいる母が愛する息子の祈りに答えたか
のように思えた。