『 幸福 』




                あの時の婦人は元気にしているだろうか
                音信不通だった息子が戻って幸せだろうか

                俺はあいつを許せなかった
                あわよくば殺してしまおうと思った

                でも殺さなくてよかった
                あの婦人が悲しむ顔は見たくない
                俺が母親を失って悲しみに暮れたように
                あの気持ちにさせなくて本当によかったんだ

                彼女に贈った黄色い花
                花言葉はいろいろある
                「真実の愛」
                「元気」
                「永遠の幸福」

                そういえば、よく言われている「嫉妬」
                確かに、俺は嫉妬していたのかもしれない
                息子に

                母親のいるあいつが羨ましかった

                だからお前に言ってやる

                2度と親不孝なことはすんなよ
                もし母親を泣かせるようなことをしたら
                俺が許さねえからな

                幸せになれよ










                   

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