男はベンチでうなだれた表情でうつむいていた。そしてその周りに城嗣の他
に、健一と純子も立っていた。
「・・お前はその待ち合わせ場所にブツを手に取る代わりに金を置いて行
く、という手はずだったわけか。」
「そのブツは、おめえを雇っている男に渡して報酬をもらう事になってたん
だな。」
「で、爆弾が仕掛けられた。その取引をごまかすために爆弾を使ったという
事か?」
「ねえ?もしかしたら・・あなたを抹殺しようとしているじゃない?」
「えっ」
男は顔を上げた。健一と城嗣も彼女を見た。
「お金だけ受け取って、あなたを殺そうとしてるのよ。」
「なぜそんな事を?」
「簡単よ。だってこの人は事情を知っているんですもの。」
「い、いや、俺は何もー」
「利用された時点でもうダメなのよ。」
男は震え出した。
「・・そんな・・・・。実は・・・人質を取られてて・・」
「人質?」
「妻と息子です・・。自宅で監禁されているんです・・・」
「なんて事。」
「卑怯なマネをしやがる。」
「・・・よし、とにかく探そう。まずはそのブツが隠されているという場所
まで案内してもらおう。」
健一たちは男を立たせ、連れ添って歩き出した。
そして彼らは足を止めた。そして城嗣は腕を組んで目の前にいる吉羽刑事を
見た。
「おや、何故貴方方がここに?」
すると健一。
「たまには遊びたいと思ってね。」
「ふーん、大の大人が3人で?」
「いいじゃないの、来たって。私たちだってたまには息抜きしたいわよ。」
「そうですか。でも残念でした。事件発生なんでね。」
「爆弾が仕掛けられたんだ。早くしないとー」
「分かってるっ。さあさ、さっさと早く帰って町のパトロールにでも行って
くれませんか。」
「ねえ、私はいいでしょ。爆弾探すの手伝わせてよ。」
「は?」
「彼女は爆弾処理に長けているんだ。」
「そうですか。それは良かった。少なくともこの男どもよりは役に立ちそう
ですな。」
「ちえっ」
「あら、この人たちも連れて行くわ。いいでしょ。」
吉羽は顔をしかめたが、見た事もない一人の男に気付いた。
「誰だ、こいつ。」
「今回の事件を握っている人よ。この人もいいでしょ。」
そう言うと純子はすたすた行ってしまい、それに付いて行った健一たちの後
ろ姿を見て吉羽は大きく息を吐いた。
お金を持っていた男が言われた場所はゴミ置き場のある遊園地敷地内の奥
まった方だった。
そこへ現れた男を捕まえ、爆弾の設置場所を吐かせようという手はずだ。
やがて一人の男が現れた。男は辺りを慎重に見渡している。
そして健一たちは飛び出し、逃げようとする彼を捕えた。が、もう一人駆け
出す人物を見た城嗣はとっさに追い掛け、飛びかかった。
「待てっ」
「・・く、くそっ」
城嗣はすでに取り押さえされている男のところへもう一人連れて来ると、同
じように地面に座らせた。
「爆弾を仕掛けたのは誰だ。」
「・・・・知るかよ。」
「ほう、大勢の人たちが死ぬかもしれなかったのに、か?」
健一は男を顔を蹴った。
「いてっ」
「言わないと、今度は肋骨を折ってやるぜ。」
「・・・遊具の中だよ。」
「遊具って何だ。」
「さあ・・何かなあ。」
男は健一を見て分かった、分かったというジェスチャーをした。
「・・メリーゴーランドだ。」
「何?」
城嗣と純子は思わず顔を見合わせた。
「俺たちがさっきまでいたところじゃねえか。」
「あれごと爆破するつもりだったのね。あそこには多くの家族連れが乗って
たわ!」
純子は考えただけでも恐ろしいとばかりに顔を覆った。
「止めるんだ。」
「そいつらを連れて行け。」
彼らは、やってきた警官たちに男達を引き渡した。
「あ、もうひとつ。この男の家に立てこもっているヤツがいる。そいつも捕
まえてくれ。」
「分かりました。」
警官たちは城嗣に敬礼すると立ち去った。
健一たちは残った警官と到着した爆弾処理班と共にメリーゴーランドに近づ
いた。
「これで探し当てるわ。」
純子はポーチの中から小さな機械を出し、自分のはめていた腕時計に組み込
んだ。
そしてそのわずかな音波を頼りに歩き出した。
「爆弾はあの下だわ!」
それは馬の乗り物がついている棒のようなものが上下する穴だった。
「いつの間につけたんだ。」
純子は処理班が取り出すのを見届けると、また機械の入った時計を近づけ
た。
「その赤いコードに違いないわ。」
確かにそれを切ると、カチカチ、という耳障りな音が止まった。
カウンターは50秒前だった。
遊園地にまたいつもの賑やかな声が溢れた。あの脅されていた男の家族も無
事に解放され、一連の騒動がすっかり収まった。
約束通り、城嗣は華音を連れて来たが、前と違って佳美の姿もあった。
彼女はやっぱりというか、彼と来られた事だけで浮かれていた。
「あー、いいなあ。きっと周りの人たち、私たちを家族だと思ってたりし
て・・・。まあいやだ、私ったら。」
「何してんだ、置いてくぞ。」
いつの間にか置いてけぼりにされた佳美は慌てて城嗣と華音に付いて行っ
た。
「パパー、またあれに乗ろーよ。」
城嗣はメリーゴーランドを見て彼女を違う方向へ向かせた。
「華音、今度は違うのに乗ろう。」
「えー、あれがいいー」
「まだ今度な。」
城嗣は渋る華音を強引に連れて行った。
そんな様子を見ていた健一と純子はやれやれと顔を見合わせた。
そして彼らの後を付いて行った。
