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                         〜エピソード6 午後の交番は大騒ぎ〜




              警察署。
              鷲尾健一と浅倉城嗣はロビーに降りて来ると、ほぼ同時に入り口近くに
             ある時計を見つめた。
              「3時・・・。」
              「後15分か。」
              健一はふうと息を吐いた。
              「どうするかな・・。ここでの仕事は終わったけど・・戻りたくないな。」
              「しばらくどこかで休もうぜ、健。ジュンに任せとけばいいさ。」
              「そうだな、あいつなら上手くやってくれるだろ。」
              2人は入り口に向かっていたが引き返して奥へと歩いて行った。

              交番では、白鳥純子が留守番みたいなかっこうでいたが、彼女は2人がい
             ないのをいい事に奥で大好きなお菓子をぱくついていた。
              やがて彼女はカウンターに来ると、座ってテーブルに手をついて顎をのせ
             た。そして壁の時計を見上げた。
              「・・・もうそろそろ来る頃だわ。でも、今日はいないからすぐに帰って
               くれるわね。」
              そしてしばらくして女の子達のワイワイはしゃぐ声が聞こえて来た。
              純子はため息をついて、じっと入り口を見つめ、特に気後れする事なく
             普通に入って来た女子高生たちを見た。
              「こんにちはー。あれー、ジュンだけなの?」
              「ねー、健ちゃんはー。」
              「ジョーはどこ?」
              女子高生たちは、普段彼らがそう呼び合っているのを聞いて自分たちも真似
             して同じように呼んでいるのだ。
              純子は腕を組んだ。
              「2人とも署に行っていてここにはいません。残念でした。」
              「えーっ、ジュンちゃん、隠してない?」
              「何言ってんのよ!どうして私が隠さなきゃいけないのよ。」
              「だってさー。」
              「ジュンはずるいよ、2人も独り占めしてさー。」
              「何よ、別に独り占めなんかしてないわよ。変な事言わないで。」
              健一と城嗣の2人は、イケメン警官として地域の女性達の間で評判になって
             おり、時折特段用もないのに話しかけて来る人もいた。
              純子も美人でスタイルがいいので、特に男子高校生に人気があったが、彼ら
             はどういう訳か話しかけたりする事すら出来ず、ただ見ているだけであった。
              その点ではやはり女子高生たちの方がパワフルである。
              そんな彼女達は学校が終わると、いつもここへ立ち寄るので、この時間は
             ちょっとした恐怖であった。
              「2人ともいないんじゃ、つまんなーい。」
              「帰るか。」
              「そうしよ、そうしよ。」
              純子はうんうんとうなづいた。
              「そうそう、お家の人心配するからねー。」
              「心配なんかしてないよ、平気。」
              「そんな事言って。」
              「じゃ、帰ろ。」
              「またねー、ジュンちゃん。」
              「ほんとに隠してないの?」
              「しつこい!」
              女子高生たちは笑いながら出て行った。純子はやれやれと息を吐くと、また
             奥へ引っ込んだ。

              やがて健一と城嗣が戻って来た。純子はさっそく彼らのところへ行って話し
             出した。
              「もう大変だったわ。私が隠してるんじゃないか、なんて言うのよ。」
              「ふーん。」
              「もうっ、私の身にもなってよ。追い返すのに一苦労なんだから。」
              健一は笑った。
              「わかったよ、ジュン。」
              奥へと向かった城嗣は、ロッカーに手をかけてふと奥を見た。
              「・・・。」
              彼は何かの気配を感じ、ベルトのホルターにある拳銃に手をかけながら
             ゆっくり進んだ。
              「ジョー!お帰りー」
              「・・・うわあっ」
              健一はえっと言う表情で城嗣に女子高生が抱きついているのを見た。が、
             そんな彼にも女子高生がしがみついてきた。
              「うわーい、健ちゃん〜、会いたかった〜。」
              「お、おい、離せっ」
              「もう!帰ったんじゃなかったの!」
              純子は彼女達を離そうと思ったが、ついに2人は彼女達から逃れるために
             交番を出て行ってしまった。
              「待って〜」
              女子高生たちは逃げる2人を追いかけて行ってしまい、交番の中は再び静
             けさが戻って来た。
              純子はしばらく呆然としてたが、やがてまた引き返した。
              「・・・仕方ないわ、無事に戻ってくる事を祈りましょ。」
              そして彼女はまた部屋に入り、テレビをつけてお菓子を口に入れた。



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