そこへ健一たちが入ってきた。
「甚平、いたのか」
「あっ、アニキ。留守番してたよ。新人さん1人じゃ心配だからね」
「まあ、ナマ言っちゃって」
純子がそう言って甚平の額を指で押すと、甚平はえへへと笑った。
「ん?カードがないぞ、健」
「何?」
甚平は言った。
「ああ、あの気持ち悪いカード?捨てたよ。いたずらされたんだろ」
「甚平!」
健一が急に怒鳴ったので甚平はびくっと身体を縮こませた。
「やたらめったら触るんじゃない、あれは大事な証拠品だ」
「・・・証拠・・品?」
「恐ろしい殺人団のお土産だぜ」
城嗣はゴミ箱からカードを拾った。
「彼女達がまた動き出す。これからまた事件が起きるだろう」
健一がそう言うと、甚平はうひゃあという顔をした。
「女なの?へえ、お姉ちゃんより怖いのなんてねえ・・」甚平は純子の睨んだ顔
を見て肩をすくめた。「わ、怖っ」
「ふんっ。甚平、あまり言うとここを追い出すから」
「分かったよ」
純子が奥へ引っ込むと、甚平は巡査に耳打ちした。
「見たかい?アニキたちよりたちが悪いのがお姉ちゃんだよ。気をつけた方がい
いよ」
「甚平、ジュンにまたどやされるぞ」
健一が呆れたようにそう言うと、甚平は腕を組んだ。
「だってさ、ホントの事だもん」
「呆れたヤツだ」
城嗣は外へ出た。
健一は奥から出てきた純子にまた嫌味を言っている甚平を見たが、彼には何だか
微笑ましく思えた。
きっと甚平は寂しいのだろう。やはり純子といる方が楽しいのだ。
ここにいる事を選んで良かったのだろうかと一瞬だけ考えがよぎったが、自分た
ちで決めた事だ、と気を引き締めた。
この国に住む人たちの笑顔を守らなくては。健一は外へ出て、城嗣の隣に来る
と、2人で何やら談笑し始めた。
そんなわけなので、純子は思わずこう言った。
「何よ、健ったら。私を1人にする気?」
「お姉ちゃん、1人じゃないだろ。オイラだっているんだし」
「そう言う意味じゃないわっ」
「ジョーに勝つためには、料理が出来なきゃダメだろね」
「えっ、先輩、料理出来ないんですか?」
「・・で、出来るわよ!・・・目玉焼きくらいは・・」
「誰だって出来るよ」
「おだまりっ」
甚平はこそこそと巡査に耳打ちをした。
「・・んもう・・」
純子ははあとため息をついた。そして逃げるように健一と城嗣のところへ行って
しまったので、2人は顔を見合わせた。