さて、彼らの交番に若者がやってきた。制服が真新しくてちょっとばかり大きいらし
い。これがぴったりになるまでどのくらい経つだろう。
「君がここの担当につく大槻・・尚人巡査だね」
「はいっ、よろしくお願いいたします!」
青年ははっきりとした口調で返事をし、敬礼をした。2人は思わず顔を見合わせた。
「俺は、鷲尾健一巡査長だ」
「浅倉城嗣警部補」
「えっ、そんな偉い方がどうして交番なんかに?」
「いいだろ、別に」
「し、失礼いたしました!」
「・・・敬礼はもういいって・・(俺はそんなに偉かねえし)」
「巡査の最初の配属はたいてい交番だ。交番というのは・・習ったと思うけど、街に住
む人々の命と生活を守る大切な役目がある。地域を知り、また犯罪阻止という点では、
警察官としての基本を学ぶ適所だ。パトロールを通じて勉強することも多い」
「はい」
大槻巡査は健一の一言一句聞き逃さまい、という顔つきで聞いている。城嗣はそんな彼
を見て吹き出しそうになったが、同じように真面目な顔で済ましていた。
そんな彼なので、とりあえず面接の時間が終って巡査が署へ戻ると、こう言った。
「あいつ、何だか昔のおめえを見ているようだな」
「え?」
「真面目でさ。」
健一は笑って歩いたが、ふと足を止めて振り向いた。
「おい、待て。ジョー、どういう意味だ?それじゃ今の俺は真面目じゃないとでも?」
「そうは言ってねえよ」
「そうじゃないか」
城嗣は笑った。
「とにかく明日からはしばらくあいつと一緒だ。忙しくなりそうだな」
「新人教育か。俺は犯人を追っている方が性に合うぜ。おめえに任せるよ」
「おい、ジョー。逃げるのか?お前は警部補だぞ。本来ならー」
「俺みたいなチンピラより、おめえみたいな真面目な警察官の方がいいんじゃねえ
の?」
健一はシャワーを浴びに行ってしまった彼を見て、顔をしかめた。
チンピラだと思った事どうしてわかったんだ?
まあいいか。健一はカップにコーヒーを注いで口にした。
