だが彼女は違った。もちろんそんな彼の本心など分からないのでとにかく
ムチャな事だと思っている。
佳美はぐいっと城嗣の腕を掴んだ。
「分からず屋!!こんなに心配してるのに!」
「何すんだ。」
佳美は意を決したように彼の頭を抑えて下げ、伸びをして唇を重ねた。
が、彼女は慌てて突き放し、立ち去ろうとしたが城嗣は彼女の腕を掴んだ。
「おい、無理矢理奪っといて逃げるのかよ。」
「逃げっ・・人聞きの悪い事言わないでよっ!」
城嗣は何も言わず、彼女を引き寄せると顔を上げて唇を重ねた。
「・・・・。」
「お返しだ。」
「・・ふんっ」
城嗣は笑って佳美を抱きしめた。彼女は目を閉じてじっと2人はそのままで
いた。
白バイでパトロールして戻って来た純子は交番の中に入ると談笑している健
一たちを見て、あら珍しいと思いながらヘルメットを外した。
「何とか話は出来たようね。」
奥の方にいた城嗣をちらと見た彼女は、健一とコーヒーを飲んでいる佳美を
見てそう言った。
「そうね・・。」
「私ももらうわね。」
「ねえ・・浅倉くんから聞いたけど・・あの組織を追ってきたって本当?」
健一と純子は顔を見合わせた。
「まあいずれは分かる事だわね。」
「・・・・俺はジョーの気持ちはよくわかる。俺も・・奴らを憎んでる。」
佳美と純子は彼を見た。
「俺の親父はかつて、副所長をしていた。彼らとの抗争が激しくなり、親父
と数人の仲間が彼らを追いつめたが、もう少しというところで・・・・。」
彼は一瞬口をつぐんだ。
「奴らの凶弾に倒れた。」
「・・・・・。」
「俺は誓ったんだ。絶対に親父の敵を取るってね。でもそれ以前に、俺たち
は奴らを壊滅させる目的で雇われたんだ。そのために結成されたといっても
いい。」
「そうね。そしてそれがようやく果たせるかもしれないわ。」
「・・絶対にやってやるさ。」奥にいた城嗣が言った。「俺たちの手で必
ず。」
「ジョーったら何でそこにいるのよ。ここへ来たら。」
「・・・別に。」
「それより美味しいわね、このコーヒー。」
佳美がそう言うと、城嗣は腕を組んだまま言った。
「そりゃ俺が淹れたんだから旨いに決まってるだろ。」
「何よ、機械のおかげでしょ、コーヒー淹れただけで偉そうにしないで
よ。」
「ふんっ可愛くねえな。」
「どっちが。」
健一と純子はあれれという顔をして顔を見合わせた。