城嗣は考え事をしていた。
                 親から渡された何かの暗号の仕組まれたロケットを渡したら、案の定それは組織
                 に関する重要な情報だった。
                 確かにそれを持っていたとなれば、スパイとして怪しまれても不思議はない。
                 彼はスパイではないのだが、父親は組織の最高司令官だったのだ。関わりがな
                 かったとは言えないだろう。
                 もうここにはいられないのだろうか。せっかく奴らを倒して親の仇を取れると
                 思ったのに。
                 城嗣は目を閉じたが、何かが頬に触れたので目を開けた。
                 「・・パパ・・?」
                 彼は膝の上に抱いている華音を見下ろした。
                 「疲れたの?」
                 城嗣は笑った。
                 「大丈夫だ」
                 「良かった。パパ、明日のお休みは遊園地ね」
                 「ああ、そうだな。それじゃあ早く寝ようか」
                 「うん、明日が早く来るように!」
                 城嗣は華音の手を引いてベッドのある部屋に連れて行った。



                 朝になった。
                 寮のある部屋から飛び出した華音はドアを持ったまま中を覗き込んだ。
                 「パパー」
                 そして城嗣が出てくると、嬉しそうに彼の手を引いて駆け出した。
                 「華音、そんなに走らなくても遊園地は逃げないよ」
                 「だってー」
                 外階段を降りた2人は通りを進んだ。
                 そんな彼らをじっと見ている人物がいたが、やがて姿を消した。
                 やがて角に差し掛かったとき、城嗣は突然鈍器のようなもので後頭部を殴られ
                 た。
                 「ううっ」
                 そして彼は倒れ込み、殴った男は華音の口を抑え、抱えてもう1人の男とともに
                 走り去った。
                 そして遠くで待っていた車に乗り込み、高速で走って行ってしまい、また元の静
                 けさに戻った。
                 城嗣は起き上がる事も出来ず、そのまま気を失った。


                  (後編へ続く)








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