城嗣はシューという音に気づいて目を開け、見上げた。
「・・・何だ・・・・・うっ」
彼は思わず鼻を抑えたが、床にうずくまった。
どのくらいの時間が経っただろうか。城嗣はゆっくりと目を開けたが、彼ははっと
した。
後ろ手に縛られて横にされていたのだ。
「・・・くそっ」
そして誰かが近づいてくるのに気づき、その方面を睨みつけた。
「誰だっ」
「暴れるなよ。おとなしくしてればすぐに終わる」
城嗣は最後の言葉がどういう意味が分からなかったが、辺りを見渡した。
「・・おい、あいつは?あいつはどうした?」
「あいつ?」
「女性だ。俺と一緒にいただろ」
「あ、ああ・・。あの女はー別の部屋だ」
「無事なんだろうな?」
「大丈夫さ」男はにやっと笑った。「俺達はお前さんしか興味ない」
「・・えっ?」
するとふいに後ろからやってきた別の男に足で体を押さえつけられた。
「そのとおりだよ、お坊ちゃん」
「・・・くそっ、またお前らかっ。何故俺がここにいることが分かった」
「何でもお見通しなんだよ。俺達の組織を甘く見ちゃあいけないなあ、坊ちゃ
ん?」
「・・・その呼び方はやめろ!」
すると最初の男が言った。
「こいつも例の薬を打つか?」
「そうだな」
城嗣は顔を向けた。
「・・薬?・・するとあの一連の事件はお前らの仕業か」
「そうだよ」
「一体何をー」
男は城嗣を蹴った。
「ううっ」
「寝ててもらおうか、お巡りさん」
男らがそう言ってさらに蹴ろうとした時に誰かがやってきた。警察官だった。
「まずい」
2人の男はさっと姿をくらました。
そしてやってきた警官が城嗣を縛り付けている縄を切ってほどいた。
「お怪我は」
「・・たいしたことはない」
彼は起き上がって目の前にやってきた皐を見た。
「無事だったか」
「ええ。大丈夫ですか。危ないところでした。・・自由になったので連絡しておき
ました」
「ありがとう。行こうぜ」
城嗣は彼女の前を歩き、そのまま待機しているパトカーの方へ歩いて行った。
皐はだまって彼の後ろ姿を見つめ、うつむいたが、すぐに顔を上げて歩き出した。
建物の隅に潜んでいた男達は窓から恨めしそうに去って行くパトカーらを目で追っ
た。
「・・くそっ、もう少しってところだったのに。邪魔が入りやがって」
「あの女、裏切ったな」
「・・・覚えてろよ」
男達はその場を離れた。