テレビでは連日のように一連の事件を大々的に取り上げ、キャスターが
まくしたてて伝えていた。
腕組みをして画面を睨んでいる健一の後ろでは純子が眉をひそめて見
守っていた。
「怖いわね・・」
「ああ・・人間じゃないな・・」
2人の後ろの方では、腕を組み、壁に寄りかかってじっと目を閉じてい
る城嗣がいた。
そんな時だ。電話が鳴った。
出ようとした城嗣を健一は止め、”俺が出る”と言って受話器を取った。
「はい、デリカ通り交番。」
『・・・あら・・ダーリンはいないの?』
「・・・・・(そっと逆探知と録音のスイッチを入れる)生憎、出て
る。・・何の用だ。」
『貴方じゃダメよ。引っ込んでなさい。・・ダーリンはどこ?隠しても
無駄よ。見つけてやるから。』
「・・この一連の事件をやったのはお前だろう。どういうつもりだ。」
『あら・・彼が私を抱いてくれるのならやめるわよ。・・彼が私を拒否
続ければそれだけ、死体が増えるの。』
「・・・・・。」
『でも、どんなに変えてもやっぱり彼には適わないわ・・。彼に飢えて
いるの。私を抱いて満足させて欲しいの。彼に愛撫して欲し
い・・。・・・絶対に見つけ出してみせるわよ。もし匿っていたら許さ
ないからね。交番を爆破してやるわよ。』
「・・そんな事はさせるか!」
しかし女は電話を切った。
「・・くそっ」
健一は受話器を置いた。
「・・・場所、分かった?」
「ああ、何とかな。録音しておいたから調査に役立つだろう。」
すると城嗣は口を開いた。
「・・・ふんっ。俺をおびき寄せる為の殺人か。卑怯なマネしやがっ
て。」
「ジョー、お前は絶対に出て行くな。きっとお前を殺してしまうぞ。み
な最終的には命を奪われている。」
「だからと言ってこのまま黙っていられるかよ。」
「気持ちは分かるが、わざわざ危険を冒す必要はない。いいから、刑事
課の連中に任せよう。・・いいな、ジョー。絶対に動くんじゃない
ぞ。」
「・・・・・。」
後日、誰もいないところへ出て来た城嗣は電話の横にある装置のスイッ
チを押した。そして画面に映し出された地図を見つめ、ある箇所に目を留
めるとじっと凝視していたが、やがて切った。
(・・ここか。とうとう見つけたぞ。)
パトロールから戻って来た健一は上着を脱いでハンガーに掛けた。そし
てコーヒーメーカーからコーヒーを貰おうとしてふと横を見た。
電話の横にある探知機の装置に手をやった。そして眉をひそめた。
(動かされた跡がある。・・・・まさか、あいつー)
しかし、彼のホルター掛けには拳銃が刺さったままだった。
健一は最悪の事態を想定して思わず交番を飛び出した。