それはこうだ。
                 ある夜、自分の部屋で寝ていた彼は、突然の叫び声で目を覚ました。誰
                だ?両親の声と、知らない大人の声がする。それも数人。
                 彼はそっとベッドから降りると、ドアを開け、声のする方を見た。両親
                の部屋からだ。 すると、突然、数人の覆面をした大人達が飛び出して来
                て、階段を降りて行った。
                 彼が両親の部屋へ行こうとした時、大爆発が起こり、その部屋から炎が
                立ち上った。
                 とっさに彼は駆け出した。そして中を見て目を見張った。
                 部屋の中は炎に包まれ、煙が充満している。そこでは咳き込む両親の姿
                があった。
                 「ママ!パパ!」
                 「・・・ジョージ!来ちゃダメよ!」
                 「・・ママ!」
                 「・・・愛してるわ・・ジョージ・・」
                 母親はそう言うと、気を失い、すでに倒れている父親に寄り添うように
                倒れてしまった。
                 「ママー!パパー!」


                 「・・・その火に焼かれて、2人とも死んでしまった。俺は・・・気が
                 つくと病院にいた。点滴もしてたと思う。軽い脱水症状になってい
                   た。」
                 「・・・・・。」
                 佳美たちと同様、健一も何も言えずに彼を見下ろしていた。彼は長い事
                ずっと城嗣と一緒にいたが、初めて聞いた話だったからだ。
                 確か、彼の両親は悪の組織から抜けたと聞いていたが・・。きっとその
                仲間だった連中が、制裁のために殺害したに違いない。
                 「・・・・だから、今でも炎を見るとその事を思い出して体が硬直し、
                息苦しくなるんだ。」
                 佳美と美香はうつむいた。
                 「・・・だいぶ良くなった。すまねえな、手間掛けちまって。」
                 「何言ってんのよ・・」
                 城嗣はふと佳美の右手を見た。人差し指の先から血が出ている。佳美も
                同じように見た。
                 「あら、やだ・・さっきどっかで切っちゃったのね。」
                 「止血しなきゃ。」
                 すると、城嗣は何も言わず、その手を掴み、指を口に付けて血を吸っ
                た。そしてポカンとしている彼女を尻目にポケットからガーゼを出して歯
                で引き裂き、指に巻いた。
                 「戻って医務室へ行け。」
                 そして彼は立ち上がったが、よろめいて木に寄りかかってしまった。の
                で、健一は彼を支えた。
                 「あまり無理するな。」
                 「もう平気だ。」
                 城嗣は歩き出したので、健一も彼と歩き出した。
                 佳美はじっと城嗣の後ろ姿を見つめていたが、思い出したように右手に
                視線を移した。そしてそっと片方の手でガーゼに包まれた指を愛おしそう
                に包み込んだ。
                 それを見ていた美香は微笑んだ。
                 「行こうか。」
                 「うん。」
                 2人も歩き出した。





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