ロビーに降りた健一と城嗣はそのまま外へ出て止めてあったパトカーに乗
               り込んだ。
                「健、さっきのは本音か?」
                「さっきって?」
                「巡査のままでいいって。」
                健一は正面を見つめた。
                「・・・何だか、その方が色々な意味で自由な気がしてさ。後輩の育成な
                んて、柄に合わないよ。」
                「それもそうだがー」
                2人はそこで口をつぐんだ。目の前の車が異様なくらい蛇行しているの
               だ。
                「何だ?」
                すると急にその車はふらふらしたまま歩道に乗り上げ、そのままスピード
               を下げず壁に激突した。
                2人はすぐさまパトカーを路肩に止め、降りて車に近づいた。
                「おい、大丈夫か。」
                「見ろ、健。」
                ドライバーがいたが、ハンドルに覆い被さるようにしてぐったりしてい
               た。見ると額から血が流れている。彼らは救急車と応援を要請した。それは
               特に打ち合わせをしたわけでなく、自然に彼らがそれぞれ動いた結果であっ
               た。
                到着した救急隊はドライバーを担架で救急車に入れたが、重傷を負ってい
               るものの、しばらく入院すれば助かるだろうとの事だった。
                2人は安堵した。そして応援の警官に任せて彼らはまたパトカーを走らせ
               た。



                「あの2人はやはりここへ戻せ。遊ばせておくのはもったいないだろ。」
                課長は署長に向かってお辞儀をした。
                「はっ。そのように手配いたします。」
                「それに・・・中にいればそれだけ監視できるからな。とにかく奴らは何
                をやらかすか分からん。来たときから何かそんな雰囲気がした。」
                「全くです。」
                署長はしばらく窓から外を見つめたが、続けた。
                「まあ・・・一部の刑事らは黙ってないだろうがな。だが連中にはいい刺
                激になるだろうよ。」


                交番に所長がやって来た。そして健一たちの目の前にレジ袋を置いた。
                「ほれ、陣中見舞いだ。」
                「ありがとうございます。」
                「近くまで来たついでだ。・・・・ところで、2人とも元気ないな。どう
                した?」
                「・・・・・。」
                所長は彼らの様子を見てため息をついた。
                「上から何か言って来たか?・・・気にするな。お前達のやりたい事をす
                ればいい。じゃ、これで失礼するよ。」
                「はい、失礼します。」
                2人はパトカーに乗って去って行くのを見届け、また中へ戻った。
                健一はレジ袋の中を覗き込んだ。パンとミルクが入っている。
                「へっ、顔見ただけで何か分かるなんて、所長も抜け目がねえな。これ
                じゃあ何もできねえや。」
                「ああ、そうだな。」
                健一は笑って城嗣に彼の分を放り投げた。
                「さ、食おうぜ。夜の見回りだ。」
                「(受け取って)分かったよ。」
                2人はゆっくり味わう事なく頬張ると、パトロールに向かった。





              
                               fiction