『 夢みるクリスマス  』


              ジョージはテレビの画面をじっと見つめていた。
              そこにはクリスマスの映像が流れていて、あたり一面真っ白で雪が降り注い
              でいた。
              それはキラキラしてそれは美しいものだった。
              ジョージはまだ雪を見たことがない。でもクリスマスにはきっと降るんだ、
              と彼は思いワクワクした気持ちになっていた。
 
              母親のカテリーナは彼を連れて買い物に出かけた。
              ジョージはさきほどまで見ていたテレビの話をして聞かせた。そしてクリス
              マスに雪が見たいと言う彼に彼女は微笑んでこう言った。
              「残念だけど、この島は雪は降らないのよ。でもね、クリスマスの夜は雪に
               負けないくらいキラキラしてそれはとても綺麗なのよ。」
 
              クリスマスの朝。
              雪は降っていないが、朝日がキラキラと地面や木々を照らし、とてもまぶし
              かった。
              そして外へ出ると、どこからからクリスマスキャロルが聞こえてきた。
              町の中心に建つ教会には様々なオーナメントが飾られ、近くにそびえたつ大
              きなモミの木が人々にいい緑の香りを与えていた。
 
              教会の鐘が鳴った。
              それはいつもと違ってとても輝いた、荘厳な調べとなって町を包み込んだ。
              ジョージは年に一度のこの時期が一番好きだった。
              人々はみな笑顔で温かい。島の人々は普段も人懐っこく、優しかったが、特
              にこの日は格別だった。
 
              島の子供たちにはもう一つ楽しみがあった。
              イブの夜、夜な夜な家々を周り、彼らにプレゼントをくれるサンタクロース
              だ。
              でもジョージはこのサンタクロースの正体を知っていた。
              昨年のイブの夜、トイレに行きたくなって目を覚ました彼は行きかけて誰か
              が少し開いていたドアから入ってきたのを見て、慌ててベッドの中へ潜り込
              んだ。
              そして息を殺してじっと見つめていた彼はサンタクロースが部屋を出ると、
              そっと後をつけた。
              サンタクロースはなぜか居間に入り、そこにいたカテリーナと話を始めた。
              そしてその声を聞いてジョージはあれ、と思った。
              それはサンタが帽子を取ったところでその疑問が確信に変わった。
              (・・・・・サンタはパパだったのか。)
              ジョージはちょっとがっかりしたが、でもこれはすごい秘密だと思ったら
              なんだかワクワクしてきた。
              そして彼はサンタが父親だったという事はずっと黙っていよう、と思った。
 
 
              クリスマスの夜。人々は教会に集った。
              ジョージも両親とともに向かった。
 
              人々は祈った。
              人々が希望に溢れ、有意義な暮らしができますように。
              この世界に平和が来ますように。
              すべての人にクリスマスが来ますように。
 
              この日だけはまるで時が止まったかのように辺りは静寂に包まれた。
 
 






               (あとがき)
              昨年紹介したELPの「夢みるクリスマス」という曲をもとに作ってみました。
              この歌は、クリスマスを大事にし、世界の平和への祈りを歌ったものになっ
              ています。





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