『
夢 』
「動物ってさ、やっぱりおいらたちみたいに初夢とか見るのかなあ」
「なんじゃい、甚平。藪から棒に」
「だってさ、よく言うじゃんか、結構夢見て寝ぼけたり、とかさ」
竜と甚平は、庭先でジョーに尻尾を振りながらじゃれつく犬を見ていた。健とジュンはそ
れを眺めて笑っている。
ジョーは2人に何か言っているようだ。
ここは博士の別荘だ。お正月気分を覚まそうとみんなでここへやってきていたのだ。
まあ自発的といえば聞こえがいいが、博士が彼らに招集をかけたのだ。そこで退屈してい
た彼らは集まってきたというわけだ。
「どうだかのう。おおかた、餅の食いすぎで腹いっぱいの夢でも見てるかも」
「だーかーらー、それは竜だろっ」
そんな彼らを見守るようにして座っていた博士は立ち上がった。
「あー、もしかしたらGメカも夢とか見てたりして」
「あ?」
「もしかしたら色々考えてるかもね。ゴッド・フェニックスなんか、竜にダイエットして
欲しいって思ってんじゃないの、本当に重たくてしょうがねえや、なんてね」
「機械が夢見たり考えるかい。あほらし」
博士はメカ整備室へ向かった。
ここでは多くの技師たちが正月明けもそこそこに熱心に働いている。
それらを眺めて歩いていた博士は、G−2号機のところに来てあたりを見渡した。休憩して
いるのだろうか、整備士たちの姿がない。
が、ちょうど前にテレビ画面のようなモニターがあり、消し忘れたのか何かを写してい
た。
「仕方ないな・・・忘れて」
そしてスイッチに手を伸ばしたが、はたと止めた。
そこには黒塗りの外車が走っていて、颯爽と高原を走り抜けていた。
博士は何気なく点滅している装置に目を移した。そこからはいくつものコードが伸び、
G−2号機に繋がれていたが、そこの点滅が時々妙な動きをしているのに気づいた。
まるで何かに反応しているみたいだ。
反応・・?
博士はもう一度モニターを見た。
ドライバーが写っていた。何か喋っている。
ああ、外国のドラマか。
そして画面の中の車は明らかにドライバーの声に反応している。
会話をしているのだ。
G−2号機はまた何か反応していた。
博士が部屋へ戻ろうと廊下へ出るとジョーが歩いてきた。
「博士、あいつ疲れたのか寝てしまいましたよ。またお願いします」
「ああ、わかった。久しぶりに君に会えて嬉しかったんだね。あんなにはしゃいでいるの
を見るのは初めてだ」
そして行きかけて続けた。
「ああ、ジョー」
「え?」
「G−2号機を少しばかり乗り回してくれ。性能を試して欲しい」
「あ、はい。何か仕掛けでもつけたんですか?」
ジョーは冗談めいてそう言った。
「いや・・ジョー、たまには話しかけてみたら。機械も長年使っていると魂が宿ると言わ
れている。きっと喜ぶだろう」
ジョーは目をパチクリさせた。博士は突然何を言い出すんだ?
博士は笑って行ってしまい、ジョーは首をかしげてG−2号機のところへ向かった。
G−2号機はジョーに話しかけられてどんな反応するだろうか。
博士は笑みを浮かべた。
「そいじゃあ、お前のヘリコバギーは、わざとぶつけたりしないでもっと大事にしてく
れーって思ってんじゃねえの?」
「ふんっ。あれは仕方なかったんだいっ
あいつは強いからちょっとやそっとじゃへこたれやしないやっ」
ー 完 ー