『 友への 想い 』





               ジョーには、ここへ来てから果たしたいことがあった。
                                                間違って殺めてしまった幼馴染アランとの再会だ。

               会って彼に謝りたい。許してもらえるか未確定だが、とにかく自らの言葉で謝罪をし
               たい。
               許してもらえないかも知れない。
               いや、それはむしろ当然だ。
               でも、会わなければ、ずっと悔やむことになる・・・

               会いたい。大事な友に。


               ジョーは歩みを止めた。
               アランの後ろ姿を見たからだ。
               彼は天使の子供たちと何かを話している。
               一人一人身を屈めるようにして話しかけ、頭を摩り、または何か真剣な面持ちで話し
               かけている。
               子供の表情からして、何かいけないことをして叱られているようだ。
               やがて子供たちは去っていった。
               立ち上がったアランはこちらに向き直った。

               「・・・・」
               ジョーとアランはしばらく見つめあった。
               どのくらい経っただろう。最初に声を掛けたのはアランだ。
               「ジョージ」
               「・・・・」
               ジョーは目を逸らそうとしたが、彼の穏やかな表情を見て少しホッとした。
               「やっと会えた。お前がここへ来ていると聞いて随分探したよ」
               「・・アラン・・」
               アランは彼の方へ歩いてきた。
               「なんだ、どうした。”あの時”もお前はぼうっとしていたな」
               「・・そうだったかな・・」
               アランは笑った。
               「お前、ここへ来るには早すぎやしないか?私を追ってきた、なんて言うなよ」
               「ああ・・でも・・・お前に言いたいことがあって」
               「なんだい?」
               すると突然ジョーは土下座をして頭を下げた。
               「許してくれ、アラン!咄嗟のこととはいえ、俺は大変なことをー」
               「ジョージ」
               アランはしゃがんでそっとジョーの肩に手を置いた。
               「やめてくれ、ジョージ。私はそんなこと願ってなんかない。むしろお前が心配でた
                まらなかった。
                きっと後悔の念で居た堪れない思いに押しつぶされそうになっているだろう、どう
                にかして救って楽にしたあげたい。・・・ってね」
               ジョーはまだ顔を上げずにいたが、アランは優しくそのまま続けた。
               「それに、おかげで”彼女”に会えた。ああ、そうだ、”彼女”に会えたかい?」
               「・・・・・」
               ジョーは目を閉じた。
               「彼女にもー」
               「ジョージ・・」
               すると凛とした声が背後でした。
               「まだ終わってないわ」
               「・・!」
               アランとジョーはその声の主の女性を見上げた。
               彼女はニコッと微笑んだ。
               「まだ競争が終わってないでしょ。負けないわよ」
               ジョーはつぶやいた。
               「ああ・・そうだ・・まだ終わってない」
               2人は立ち上がった。
               「君はほんとに好きなんだな」
               「ええ、そうよ。あのスリルたまらないわ。ね」
               彼女は最後はジョーに向かって言った。
               ジョーは思わず笑った。
               「元気が出たようだな。」
               アランはジョーを見て言った。
               「なあ、お前はすでに許されてる。だからここにいるんじゃないか」
               「・・・」
               「それに・・お前は最後に大仕事を成し遂げたんだ。それは神も認めてくださってい
                る」
               ジョーはここへ来てから、自分が地球の最後を食い止めた話をいくとどなく聞いてい
               た。
               てっきり健たちが止めてくれたと思っていたのに。
               「彼女とお前はもうギャラクターではない。”神の子”だ。皆、平等だ。ジョージ、
                私はここの神殿の神官として神に仕えている。何か神に相談したいことがあればい
                つでもここにおいで。私が取り次ぐことを願い出たんだ」
               「・・・ああ・・わかったよ、アラン」

               ジョーと少女は雲でできたレーシングカーでレースをすることにした。ここは広い
               空、どう走っても自由自在だ。
               それを見つめているアランの近くに天使のピエトロがやってきた。
               「・・なぜ、お前さんを殺したやつにそんなに親切にできるんだ?」
               アランは表情を変えずに答えた。
               「・・・あれは、私がそう彼に仕向けたんだ」
               「・・・何?」
               「私は彼に伝えたかった。”復讐の虚しさ”を。相手は途方もなく大きく卑怯な連中
                だった」
               そして続けた。
               「それに、ジョージは性格から行くと、仲間に銃を向けたらきっと彼を守る行動を起
                こすだろう、と」
               ピエトロは頷いた。
               「・・あいつ・・この前、自分のことを顧みず、他の連中を助けたことがあった」
               「ジョージはそう言う奴なんだ」
               ピエトロは笑った。
               「ふっ、似た者同士なんだな」
               彼はそう言って去っていった。
               アランはつぶやいた。
               「・・そうかも知れんな・・」
               空では相変わらずレースが行われている。なかなか決着がつかないらしい。
               「まだやってるのか?」
               アランはやれやれと頭を振って歩き出した。
               彼らのためにドリンクを用意してやろう。もしかしたら結果次第ではちょっと喧嘩み
               たいになっているかも知れないが。

               でも3人で他愛のない話ができればいい。
               アランはそんなことを思いながらその場を後にした。




                                ー 完 ー








                                fiction