『 こちらもクリスマス 』



              ヒマラヤ。
              連日猛吹雪が吹き荒れ、山々もすっかり真っ白だ。

              だが、今日は風も穏やかで、日差しさえある。雪が陽に照らされて眩しい。
              その山々の地下でひっそりとある施設では甲斐甲斐しく働いている人々がいた。ギャラ
              クター隊員達だ。
              ちょっとでも手を休めたらどでかい雷が落ちてくる。
              そんなわけで・・

              「あーあ、なんで今日も仕事しなきゃなんねえんだ?」
              「仕方ないだろ、地球征服とかなんとかのためだ」
              隊員達は手を動かしていると同時に口も動かしている。
              「地球征服なんていつだってできる!今日はクリスマスなんだ!」
              「ああ、そうだ、クリスマスだ」
              「こういう日は休んでもいいんじゃないか?」
              「でもなあ・・」
              「カッツェ様に話してみようか」
              「よせよ、わかるもんか、あの人なんかに」

              「何をごちゃごちゃ言っておる!」
              立ち話をしていた隊員達は振り向いて慌てて敬礼した。
              「カッツェ様、すこぶる順調であります!」
              カッツェははあとため息をついた。
              「馬鹿者!何がすこぶる順調、だ!手をおそろかにするな!」
              「あのう・・・カッツェ様・・・・」
              「なんだ」
              「今日はなんの日でしょう」
              「今日だと?」
              カッツェはじっと考えた。
              「12月25日だ。それがどうした」
              「12月25日といえば・・」
              「クリスマスです、カッツェ様」
              「それくらい知っている!クリスマスがどうしたのだ」
              「カッツェ様、今日はおめでたい日なのですよ、今日くらいお休みにしませんか」
              「そうですよ、人間達もこの日ばかりは楽しんでいるではありませんか」
              カッツェは彼らを睨んだ。
              「何を寝ぼけたことを言っておる!なぜ我々のように格式を重んじるギャラクターが人
              間どもの真似事をしなきゃならんのだ!くだらん」
              「そうおっしゃいますけどね、神聖な日なんですよ、神がこの世に生を受けたお祝いな
              んですから」
              「なんだ、お前随分詳しいじゃないか。さてはキリスト教とやらに翻弄されているので
              はあるまいな?」
              「いやあ、実はここに入る前に教会に行ったことがありまして・・」
              「忘れろ、キリストよりも総裁エックス様の教えだ、わかるな」
              「はあ・・」
              「今日は人間どもは浮かれて油断している。その隙を狙って攻撃するのだ。いいな」
              カッツェは踵を返して行ってしまった。
              ので、残された隊員達は彼の背中に向かってあかんべーをした。
              「神様、カッツェ様にはご加護は与えなくて結構ですから」

              総裁の部屋に出向いたカッツェはため息混じりにこう呟いた。
              「・・やれやれ、何がクリスマスだ。まだ人間の頃の思いが断ち切れていないようだ。
              困ったものだ」
              『・・カッツェよ』
              「は、総裁X様」
              『だいぶ手こずっているようだな』
              「申し訳ありません。部下どもがどうも気持ち的に浮ついているようでしてー」
              『そうか、今日はクリスマスだったな』
              「は、本当にどうしようもー」
              『よし、今日は仕事しなくてよし』
              カッツェは顔を上げた。
              「・・・はい?」
              『クリスマスは仕事はしないでいい、そう隊長以下に伝えろ。お前も休んで良い』
              「・・えー・・いいんですか・」
              『たまにはいいだろう。それでは私も休む』
              総裁Xはそう言うと消えた。
              カッツェはしばらくぼうっとしていたが、その場を離れた。
              「やれやれ・・総裁X様の気まぐれも困ったもんだ・・ま、いいか」
              カッツェはその後隊員達を集め、総裁からの通達を伝えた。彼らが喜んだのも無理はな
              い。

              カッツェは自室へ戻ると、ベットに嬉しそうに潜り込んだ。
              「さあて、ゆっくり寝ようっと〜」
              実はカッツェも休みを大歓迎していたのだ。
              悪も仕事ばかりじゃ続かないよ、ということだ。

              お休みさない。

              そんなわけで、世界中の紛争している国のトップの皆さん、クリスマスは停戦してみま
              せんか。
              そして少しでも平和のありがたみを感じてほしいと思います。

              全ての地球上の皆さん、Merry Christmas !








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