『 捕われの燕(つばくろ) 』



                      ギャラクターの基地だと探り当てた科学忍者隊は、地下深く進んだ。
                      細い通路もくぐり抜け、ぱっくり開いた穴も軽々と飛び越え、抜群の
                      身体能力で彼らは難所を切り抜けて行った。
  
                      そんな時だ。健たちの後を走っていた甚平は、ふと子供の姿を見て、
                      あれ、と目を凝らした。子供は辺りを見渡しておそるおそる歩いてい
                      る。
                      「あれえ、どうしたんだ、あの子・・どこに行くんだろ。」
                      甚平はその子のところへ行こうとしたが、ふと足を止めた。
                      「いけね、こんな事してたらアニキたちに怒られちゃう。また後で来
                      ればいいや。ごめんよ。」
                      甚平は遅れを取り戻すために駆け出した。
                      しかしだんだん奥に行くにつれてますます暗くなり狭くなって来たの
                      で甚平は次第に不安になってきた。
                      「あれえ、ここでいいのかなあ。アニキたち、何処行ったんだろ?」
                      甚平は健たちに追いつきたいという事ばかり考えていたので周りに注
                      意が散漫になっていた。なので、途中になった落とし床を踏み、その
                      まま下に落下してしまった。
                      「うわあっ」
                      甚平は床に尻餅をつく格好で落ちた。 
                      「いったあ〜・・・・(立ち上がって腰を押さえる)ここはどこだい
                      ・・・?」
                      するとそこへ話し声が聞こえて来た。健たちではない。ギャラクター
                      だ。
                      「いけねっ」
                      甚平は駆け出したが、行き止まりにぶちあたり、彼はそのまま立ち止
                      まった。
                      「しまった!」
                      と同時に周り四方に鉄格子が降りて来て、完全に閉じ込められてしま
                      った。
                      「捕まえたぞ、科学忍者隊!」
                      「・・・畜生・・」
                      「ふんっ、チビ一匹か。後の連中はどうした?」
                      「チビとは何だ、チビとはー!・・・・・ってチビだけどさ。
                      きっとみんな来てくれるさ!お前らなんかコテンパンだぜ。」
                      「せいぜいほざいてろ。他の連中も直に捕えてやる。その時には全員
                      あの世へ送ってやるからな。」
                      ギャラクター隊員たちは笑って去って行った。
                      「・・ちぇっ・・・どうしよう、アニキたちに知らせなきゃ。」
                      甚平はブレスレットを叩いた。
                      「アニキーっ!お姉ちゃーん!」
                      甚平は電波がみんなに届く事を願った。ギャラクターが妨害電波を張
                      っていたら全くの無駄になってしまう。
                      そこへ誰かがやってきた。
                      「甚平!」
                      現れたのはジョーだった。甚平は嬉しそうな表情をしたが、すぐに何
                      食わぬ顔をして彼に言った。
                      「なんだあ、ジョーの兄貴か。遅い、遅い!」
                      「ちえ、せっかく来てやったのに。健やジュンじゃなくて悪かったな。」
                      「へっ、そんな事言ってねえよ。」
                      「(鼻で笑う)どうせ俺は呼ばねえだろ、お前は。」
                      「・・あ、それよりさ、ジョーの兄貴。ここで子供が迷子になってい
                      るみたいなんだよ。」
                      「子供?鏡でも見たんじゃねえのか?」
                      「違うよ!きっとここへ入り込んじまったんだぜ。」
                      「それが本当なら早く助けてやらねえとな。奴らに見つかっちまうぜ。」
                      「うん。それよりこれ何とかしてくれよ。」
                      「どいてろ。」
                      ジョーはエアガンを取り出し、高速ドリルをセットして鉄格子を切り
                      始めた。そして2本切ると、その脚力で蹴り、折ってしまった。ので、
                      甚平は思わず言った。
                      「すげえ、人間じゃないみたい。」
                      「何か言ったか?」
                      「ううん、何でもないよ。」
                      「行くぞ。」
                      「うん。」
                      2人は細い岩場の道を駆け抜けた。が、そんな彼らの耳に、子供の泣
                      き声が聞こえてきた。
                      ジョーと甚平は声のする方へ向かい、ギャラクターに腕を掴まれ、今
                      にもどこかへ連れて行かれそうになっている男の子を見た。
                      「あ、あの子だ。」
                      2人は飛び出した。ジョーは男の子を連れて行こうとしている隊員を
                      蹴り倒し、甚平はクラッカーで銃を向けようとしたもう一人を縛りつ
                      けた。
                      「よし、甚平、行くぞ!」
                      「よしきた!」
                      ジョーは男の子を片手で抱き上げ、2人はそのまま突っ走った。途中
                      ギャラクターが2、3人襲って来たが、彼らは難なく倒し、走りを止
                      めなかった。
         
                      そしてしばらく行ったところで健とジュンにばったり会った。
                      「健、会えてよかったぜ。」
                      「ジョー。」そして健は甚平を見た。「甚平。」
                      甚平はささっとジョーの後ろに隠れた。
                      「甚平、ちゃんと付いてこなくちゃダメじゃないか。勝手な行動は許
                      さん。」  
                      「・・・ごめんよ、アニキ・・・」
                      「健、お説教は後にしようぜ。」
                      「そうね、早く出ましょう。」
                      「この坊主も早く親へ返さなきゃなんねえしな。」
                      「そうだな、無事で良かった。よし、脱出しよう。」
                      「そうだわ、待って。」
                      ジュンは小型爆弾をいくつかセットし、そして彼らは走り出した。
                      健はブレスレットに向かって言った。
                      「竜、今から脱出する。」
                      『解った。』
                      彼らが長い洞窟を抜けると、ゴッドフェニックスがホバリングして待
                      機していた。そして彼らが飛び乗り、ゴッドフェニックスが飛び立つ
                      と同時に基地が大爆発を起こした。
                      爆音と火柱を後に、彼らはどんどん遠ざかって行った。
            
                      こうして、ギャラクターの基地がまた一つ、科学忍者隊によって消滅
                      したのである。




                                         fiction